魔王と本
この城には巨大な図書室がある、もともと読書好きだった私が魔王になってまずやったのが巨大な図書室作りだった。自分でも正確な数がわからないほどの本がある。中には挿絵が好みで集めた童話や絵本もあるので、夜や天気の悪い日の子供たちの遊び場になっている。
図書室を一番気に入っているのはルカで、いつも図書室におり、大量の本を読んでいる。
アーサー「ルカ、最近面白い本はあったか?」
ルカ「はい!ゲルニカ王国の魔法使いがドラゴンを倒す物語がとても面白かったです!五部作もあったので寝不足ですが。」
アーサー「うむ、夜更かしは感心しないな。ほどほどにな。」
ルカ「はい、申し訳ありません。お父様。」
アーサー「うーん、しかしルカはもう図書室の子供向けの本はほとんど読み終えてしまったのではないか?」
そう、巨大な図書室といっても、僕がこの世界について学んだり、魔法や政治政策関係の本ばかりなのだ。
童話やファンタジー小説っていってもこの世界も十分ファンタジーだからファンタジー小説って言っていいのかわからないが、そういった本はあくまで趣味で集めていた為、そこまで数があるわけではない。
アーサー「よし、ルカ、魔王本部にある市場に行くぞ。皆にも知らせて準備をするのだ。30分後に正門に集合だ。」
そう言うとルカの目がキラキラと輝いた。
ルカ「はい!支度をしてまいります!」
子供の嬉しそうな顔をみるとこっちも嬉しくなるな。
30分後
アーサー「よし、みんな集まったな。では行くぞ、私に寄りなさい。」
みんなが体や手にくっついてくる。
アーサー「テレポーテーション。」
魔王本部までは転移魔法で片道1秒。みんなクイーンさんに出来上がった衣装を見せに一度きていて、その時にクイーンさんがみんなと遊んでくれたのでここが楽しいところだと知っているので不安がる様子もない。まぁ本当は人間にとって最悪の魔王の集合地なのだけどね。
今から行くところは魔王の1人、ベルゼブブさんが管理している魔王一派専用の市場である。ベルゼブブさんは魔王内では物資管理が仕事である。ベルゼブブさんが各地から集めた物を他の魔王達に提供しているのだ。また、注文も可。
俺たちはその中の書店を訪れた。
アーサー「自由に見て回りなさい。ここはお店で、売り物だから雑に扱わない様にな。私は店主と話してくる。」
5人「はい!わかりました!」
さて、俺はっと、
アーサーは奥の店主室の中に入っていった。
アーサー「すみません、ベルゼブブさん。突然こんな大人数で。」
ベルゼブブ「いやぁかまわんかまわん。むしろウェルカムじゃよ。どれ、コーヒーでもどうかね?」
アーサー「ありがとうございます。いただきます。」
ベルゼブブさんは悪魔族最強と恐れられている存在なのだが。実際は日本にもいそうな、優しい書店のおじいちゃんって感じだ。
ベルゼブブ「みんな本が好きみたいでワシはうれしいねぇ。」
アーサー「えぇ、特にルカは本が大好きみたいで、もう城の図書室の子供向けの本は読みつくしてしまいましたよ。」
ベルゼブブ「へぇ、そりゃいいねぇ、私も君のところにあの子達がきてから子供向けの本の仕入れに力を入れているから、気に入ってくれるものがあるとうれしいねぇ。」
アーサー「え⁉︎ベルゼブブさんご自身で選んできてくださったんですか⁉︎」
ベルゼブブ「あたりまえだよぉ。こんな大事な仕事、部下にやらせるわけないだろう。」
そんな話をしているとルカがやってきた。
ルカ「お父様!この本とっても面白いです!」
ベルゼブブ「おぉ、ルカちゃんや、その本気に入ったかえ?」
ルカ「はい!主人公がとっても魅力的に書かれていて、ひきこまれます!」
ベルゼブブ「そうかえ、そうかえ、選んだかいがあるのお、」
アーサー「うん、私が読んでもこれは面白いな。良くできている。買って帰ろうか?他のみんなももう読みたいものを決めたみたいだし。」
ルカ「うーん、でも、まだ他にもきになるものが。」
ベルゼブブ「かっ、かっ、かっ!ルカちゃんは本当に本が好きなのじゃなぁ。」
ルカ「はい!大好きです!」
ベルゼブブ「そうか、ではルカちゃんにこれをあげようかの。」
そう言うとベルゼブブは、一本の鍵をルカに渡した。
ルカ「これは?」
ベルゼブブ「それは転移鍵といってな、好きな扉をその鍵で開けるとこの店にこれる様になるのじゃよ。まだ本が決まらないならまたいつでもくるといい。」
アーサー「いいんですか?転移鍵なんて貴重なアイテムをいただいて。」
ベルゼブブ「いいんじゃいいんじゃ、その代わりルカちゃんや、お店に来たら私と本の話でもしてくれるかいな?」
ルカ「はい!よろこんで!」
アーサー「ルカ、鍵を貸しなさい。」
ルカ「はい。」
ルカから鍵を預かると魔法で鍵のついたネックレスにした。
アーサー「これで落としたりはしないだろう。」
そう言ってルカの首にネックレスをかけてあげた。
ルカ「わぁ!ありがとうございます!」
ベルゼブブ「よかったの、ルカちゃん。似合っとるえ。」
ルカはニッコリと笑った。
何冊か本を買い。ベルゼブブさんに改めて御礼を言い、その日は店を後にした。
その晩、子供部屋を覗くと、ルカが貰った鍵を握り締めながら寝ていたと、ベルゼブブに後日伝えると小躍りしていた。
魔王と少女’S 東京水族園 @tokyosuizokuen
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