魔王と衣装


 チュンチュン

アーサー「ん………んん…起きなきゃ……」

 なんだろう。今日はやけにあったかいな。こうもあったかいと二度寝したくなる…え?アンデットなんだから睡眠なんていらないだろって?いるよ!毎日最低でも6時間は寝たいよ。居眠りだってするし、昼寝だって時にはする。アンデットが寝なくても大丈夫ってのは偏見だよ。ま、睡眠とるアンデットなんて俺くらいだけどね。

 心地よい暖かさでまだ寝てたいけど、朝ごはん作らなきゃ。もう俺は1人ではない。しかし、起きたいのはやまやまなのだが、体が重い。昨日の畑仕事で疲れたかな?いや、ほぼ毎日やってるからこんないっきに来るはずはないんだけどなぁ。腕すら上がらない。うーん、

ズシ

 うおっ、脇腹あたりがさらに重くなった。あ、でも右腕が一気に軽くなった。よし、布団を剥がしてと。

 バサッと布団を剥いだ先にあった光景は。腕や足や体の上にしがみついて寝息を立てている幼い少女が5人。

………

フォワァァァァァァァァァァァァァァァァア!!!!




アーサー「いただきます。」

5人「いただきます!」

 子供の朝食は、やっぱりパンと目玉焼きにベーコンという王道が一番だろう。

アーサー「んんっ!えー、みんないいか。夜、黙って私の布団に入っちゃダメだぞ。あ、いや、別に嫌なわけではないんだ。ほら、私も驚いてしまうからな。」

5人「ごめんなさい。お父様。」

 5人が布団に潜り込んでたのには驚いたって言ったら驚いたのだが、一番驚いたのは昨日会ったばかりの不気味な魔王の布団に潜り込むなんて。警戒心が完全に無くなっている事がわかって嬉しいのだけど。それだけ今まで寂しい思いをしてきたんだな。

アーサー「城に来たばかりなのにすまないのだが、今日私は魔王会議があるのでしばらく城を出る。みんなにはすまないのだが留守番していてほしい。家の中だけじゃなくても、城の中の草原や森でなら遊んでいて良いからな。ソウルくんがみんなの面倒を見てくれるから何かあったらソウルくんに聞きなさい。ソウルくんの言うことをちゃんと聞くんだよ。」

5人「はい!」

 くそーなんでこんな日に魔王会議あるんだよー。まだ心配だけどソウルくんが見てくれてるから安心だな。よし、ちゃっちゃと仕事終わらせるぞ。




 -魔王会議城グランデル-


 ……

ファフニール「……うむ、これにて今月の魔王会議を終了しようと思います。どなたかまだ報告したい案件はありますか?」

アーサー「あのぉ…一つ良いですか。」

ファフニール「はい、アーサーさんどうぞ。」

アーサー「案件ではなく、かなり個人的な話なのですが、実は昨日から人間の子供と暮らすことになりまして……」

 人間の子供とだと!どういうことだ!などとざわめき出す。

アーサー「待ってください。これには訳がありまして…」

 カクカクシカジカ…5分後…

魔王たち「うぉぉおいおい、そんな幼子たちがそんな人生を、それを救おうとは、なんて素晴らしいかただ、おぉぉいおい。」

 どうやら魔王と言う生き物は涙もろいらしい。

アーサー「それで、これからしばしば皆さんに協力してもらいたいことがありまして。」

魔王たち「任せたまえ!できることなら喜んで協力しよう!」

アーサー「ありがとうございます!あの、クイーンさんにお願いがありまして。」

クイーン「なんじゃ?わらわに用とは。」

 クイーンさんは妖精の森周辺を支配する魔王で、種族はアラクネという上半身は人間の女性で、下半身がでっかい蜘蛛。クイーンさんは蜘蛛の糸を巧みに使い布や服を簡単につくってしまう。魔王の中でも衣装係になっている。

アーサー「実は子供たちの服が無くて。何着か作っていただけないかと。」

クイーン「かまわん、むしろやらせろ。わらわは相手を見て服を作るから子供達の写真をよこしとくれ。」

 なぜ異世界に写真があるかって?それは俺が魔王の中でも開発を担当しているからだ。現代世界のあれやこれらを魔法を使って再現している。カメラと写真もその一つだ。

アーサー「ありがとうございます!帰ったら撮って送りますね。」

クイーン「うむ、1週間ほどで出来上がるだろう。」




アーサー「帰ったぞ。」

5人「お父様!お帰りなさい!」

 おかえりって、なんかいいね!

アーサー「うむ、皆私の部屋について来てくれ。」

 5人を横一列に並べて、1人づつ写真を撮っていく。カメラといっても日本のものとは違い、中に組み込まれた魔法式を発動させ、写真を撮っている。

 撮った写真を伝書鷹に背負わせクイーンさんのところに送った。


 1週間後


 城に大きな木箱が届いた。なかには5人それぞれのイメージに合いつつ、全て似たようなデザインになっている服が届いた。

 さすがクイーンさん。毎度見事だ。ちなみに、俺の服もクイーンさんに作ってもらってる。

 皆に着せてみるとサイズもぴったり。新しいかわいい服に皆一日中はしゃいでいた。皆かわいいなぁ、あ、

アーサー「皆、集まりなさい。記念撮影をしよう。」

レイ「きねんさつえい?」

アーサー「うむ、皆で一緒に撮って思い出を残すのだ。」

 5人を集めて写真を撮る。

フレイ「お父様もお父様も!」

アーサー「わかった、わかった。」

 時限式にしたカメラが光る。

 パシャッ!


 その晩、ひとりのアンデットが一枚の写真片手にニヤニヤしてたらしい。あ、それ俺か。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る