魔王と名前
アーサー「すまない、見苦しいところを見せた。」
5人は揃って無言で首を横に振る。
俺こういうの弱いんだよなぁ。テレビ番組のかわいそうな動物とか子供の話はだいたいティッシュ一箱使うもん。
この子達は俺が育てなきゃ。
アーサー「付いて来い。」
アーサーは5人を連れて城の王の座の奥に連れて行った。そこにあったのは。城の中心が吹き抜けになっており、森や川、草原が広がった場所に立派な屋敷が一軒立っていた。
アーサー「ここが今日からお前達が暮らす家だ。」
5人は不思議そうに顔を見合わせている。
アーサー「まぁ、まずは夕食にしよう。話は食べながらゆっくりしよう。付いて来い。」
ハンバーグにエビフライ。子供が好きそうなものを作ってみたのだが。
5人はまだ警戒しているのか、料理に手をつけようとしない。
アーサー「毒なんか入っていないから、安心して食べなさい。いただきます。」
5人「………いただきます。」
5人は、一口サイズの小さめのハンバーグを頬張った。
どうだ?口に合うかな?おいしい?
そんなアーサーの心配は一瞬で消えた。幸せそうに食べる5人の顔を見た瞬間、また泣き出しそうになった。くそ、いうこときけ!俺の涙腺!
アーサー「お、おいしいか?」
黒髪の少女「はい。こんなにおいしいもの生まれて初めてです。」
アーサー「そうか。遠慮せず。沢山食べなさい。」
5人「はい。」
アーサー「さて、食べながらでいいのだが、聞きたいことが色々ある。まずは名前だ。みんな名前が無いのならこれから先、困ることが多いだろう。だから私がお前達の名前をつけようと思うのだが、よいか?」
そう話すと、5人の箸が止まり、みなゆっくりと頷いた。
一番年上、と言っても小学五年生がいいとこ。黒髪で和風美人って感じ。和服が似合いそうだなぁ。なら
アーサー「よし、お前は今日からツバキだ。」
ツバキ「ツバキですか。はい!ありがとうございます!」
次は金髪ショートに青い瞳、ファンタジーRPG感たかいな。
アーサー「お前は今日からルカと名乗るがいい。」
ルカ「はい、ありがとうございます。ご主人。」
アーサー「いやまて、ご主人はやめなさい。私の名前はアーサー・ペンドラゴンだ。アーサーと呼……いや、私のことは父と思いなさい。だから呼び方は自由でいい。わかったか。」
ルカ「わかりました。お父様。」
アーサー「うん、」
さて、次は、赤い綺麗な髪に赤い瞳。
アーサー「お前はフレイだ。」
フレイ「ありがとうございます。父上。」
あとの2人は双子かな?茶髪に緑色の瞳。よく似てるなぁ。
アーサー「2人は双子か?」
2人はこくりと小さく頷く。
アーサー「では、2人はレイとレナだ。」
レイ「はい。」
レナ「ありがとうございます。」
アーサー「よし、ではみんな。改めてこれから宜しく頼む。」
5人「宜しくお願い致します!」
うん、みんな素直な元気な子達でよかった。でもみんな今まで1人で生きて来たんだ。そんな子達を安心させるには。
アーサー「食べ終わったなら、お風呂に入って来なさい。みんなで。」
さて、みんながお風呂に入っている間に、着替えを……着替えが無い!どうしよう!どうしよう!
アーサー「ソウルくんどうしよう!着替えが無いよ!」
ソウルくん「オチツキナサイ。アシタノカイギデクィーンサマニデモツクロッテモラエバイイデショウガ。」
アーサー「そ、そうかその手があったか。今日は今着てた服を。ウィッカーマーン。」
ギシギシと音を立てながら木でできた人が現れた。
ウィッカーマンは人型の木の魔物で、巨大化して檻状の胴体に人を閉じ込めて火をつけ自分もろとも人を焼く恐ろしい魔物なのだが仲良くなれば、なんでも手伝ってくれるいいメイドだ。うちの部下の1人である。
アーサー「ウィッカーマン!子供達の服を急ぎ綺麗にしろ!」
ウィッカーマンはビシッと敬礼すると子供達の服の洗濯を始めた。
アーサー「よし、俺は寝床の準備をしよう。」
風呂から上がった子供達は綺麗になった儀式服を着て、
ウィッカーマーンに頭を乾かさせている。
その間にホットミルクを入れ、5人の瞼がだんだん重くなっていく。
アーサー「よし、そろそろ寝ようか。みんな付いて着なさい。」
5人を連れて一室に入る。この子達一人一人に部屋を作ってはダメだ。それでは前と変わらない。こういう時に便利なジャパニーズベッド!布団!
アーサー「みんなこの部屋で寝なさい。夜更かしはしないようにな。トイレは部屋の中にある。私は隣の部屋にいるから何かあったらきなさい。」
5人みんな笑顔で話を聞いていた。多分緊張はご飯と風呂でもうなくなったのだろう。俺に対しての恐怖や警戒心ももう完全に無いな。これは素直に超嬉しい。
5人「お父様。おやすみなさい。」
アーサー「あぁ、おやすみ。」
ゆっくり扉を閉めた。
可愛過ぎだロォォオ。いやぁ、転生して良かったワァァア。ありがとう!神様ありがとう!さーて、明日の朝食考えなくちゃ。
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