2013年8月 それぞれの恋愛事情
梅雨も明け、来月からは学校も夏休みに入るので、そうなったらガッツリバイトをやるつもり。さすがに関東に出てきてからの最初のお盆は実家に帰るつもりなので、それ以外はフリーターになったつもりで働いてやるっ!
……と、これだけあたしが働く意欲がわいているのも、実は理由がある。
「え? 出雲さん、遠距離恋愛なの?」
いつものように休憩時間が一緒になった追本さんと、なぜか恋愛の話になっていた。
「そうなんですよ。なので、いっぱい稼いでおきたいんです」
そう。あたしには愛する彼氏が地元広島にいるのだ。高校の時から付き合っている彼氏は地元の大学に進路を決めたので、遠距離恋愛になってしまった。遠距離はやってみてわかったのだが、本当にお金がかかる。
「良いなぁ。青春だなぁ」
そう言って追本さんは遠くを見つめた。
「そういう追本さんはいるんですか? 彼女」
「……いるよ」
「なんで小声になるんですか」
「そりゃまぁ、大声で言えないからだよ」
そう言って、追本さんは周りをキョロキョロと見渡し始めた。実にわかりやすい人だ。
「もしかして、同じバイトの人ですか?」
「……その通り」
やっぱり。
「私の知ってる人ですか?」
「知ってると思うよ。ほら、
「あ、わかります。……ってあれ?! でもあの人って確か大学生じゃ――」
「しーーー! 声が大きい」
追本さんはそう言ってあたしの口を両手で隠すように覆った。確か追本さんは今年三十三になると言っていた。そして海亀さんはあたしの一個上だったはず。それはつまり……。
「一回り以上違うじゃないですか!」
「だから声が大きいって! 俗に言う、年の差カップルね」
「年の差って……。学生に手出しちゃダメじゃないですか」
「恋愛に国境はないのだ」
国境……? 彼の言っている意味はまったく理解できなかった。それにしてもサブリーダーという立場でありながら身をわきまえないというかなんというか、いろいろと無茶苦茶な人だと思った。
「だけどね、一応この現場、社内恋愛禁止ってことになってるから、みんなには内緒ね」
「え? なんで禁止なんですか?」
「そりゃまぁ、付き合っているうちは良いけど、別れたりなんかしたらさ、ほら。シフトとかに影響出てくるじゃん」
「あぁ……。なるほど」
委託という業務形態において、当日欠勤はご法度なのだ。
「まぁ、別れるつもりはないから。誰にバレても良いけどね」
そう言って、いつものように笑う追本さん。たが、近い将来その笑顔が失われることになろうとは、この時には当の本人ですら知る由もなかった。
【2013年8月接客ランキング結果】
52.72/Dランク
118位/127位(全社)
【結果考察】
先月せっかく60点台にいったのに、また50点台に後戻り。接客基準というのがあるということを最近知った。でも、基準が書いてある紙をもらっただけ。これを見て点数上げろ、というのは正直無理な話だ。当然、家に帰ってまで見るつもりはないので、カバンの中に入れっぱなし。目も通していない。
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