2013年5月 研修開始
入職処理は終わっていたものの、こっちの都合とバイト先の都合が合わず、あっという間に五月になってしまった。ゴールデンウイークはまた忙しくなってしまうため、とりあえずいけるとこまで研修をしてもらえることになった。
「研修を担当する
どうやら入職の時リーダーの草野さんが言っていた、サブリーダーの一人が研修をしてくれるらしい。二十代前半のパワフルな女性。ということは、この人ではない。
「あのー。私と同じ広島出身のリーダーがいると聞いていたんですが」
「ああ、追本さんね。いるよ。とりあえず研修はわたしか草野さんだから、終わったら会えると思うよ」
「ちなみに、研修ってどれくらいで終わるんですか?」
すぐに会いたいわけではないが、どんな人なのかやはり気になる。さっさと研修を終わらせて――。
「んー。早くて三日ぐらいかな」
「み、三日ですか!?」
正直驚いた。たかがレジの研修に三日もかけるの? あたしは初めてのアルバイトだから、研修にどれくらい時間をかけるのか、他と比較できないけど、それにしても長すぎるんじゃない?
「ここのレジはちょっといろいろ覚えてもらうようだからねー。ま、じっくりやりましょう」
「わかりました。始める前に質問、良いですか?」
「ん?」
「確か、私が入ったチェックサービスっていう会社、接客ランキングっていうのがあるんですよね?」
結局、接客ランキングというものがあるということだけ聞いてはいたが、あれから詳細をまったく聞かされてなかったのだ。
「あー。そういえばそんなのがあるんだっけ」
「結局、それって何なんですか?」
その質問を投げかけられた千田さんは、うーんと少し考えた後、何かを思い出したように手を打った。
「あとでショーコさんに聞いてみて。あの人が詳しいから」
「ショーコ……さん?」
草野さんに聞いた三人のサブリーダーの中に、確かその名はなかった。
「うちで唯一、Sランクを取れる人だから」
「Sランク……ですか」
なんだか少し、その響きに胸が高鳴った。スペシャル? スーパー? とにかく、一番上のランクだろう。たぶんその上にはさらにSSランクとかあるに違いない、うん(ゲームのやり過ぎ)。
「そう。まーうちではそんなに接客頑張んなくても、とりあえずレジさえしっかりできてれば問題ないから。だいたい忙しくて接客どころじゃないし。じゃ、研修始めまーす」
接客を頑張らなくても良い? チェックサービスという会社は確か、接客の会社だと聞いた気もするけど……。でもどっちにしろ、レジ操作ができなければ接客もくそもないのは確かだよね。それに、今までバイトはしたことないけど、接客にはなぜか自信があった。ふふふ……。何を隠そう、高校時代には女優を目指してたんだから! いろいろとモヤモヤすることはあるが、まずはレジを使いこなせるようにならなければ。そうして、千田さんによるレジ研修が始まった。
* * * * *
千田さんが研修三日かかる、と言った意味をようやく理解し始めた。
「千田さん、レジってこんなに覚えないといけないんですか?」
「そうだよ! 基本、レジ打つだけなんだけど、それ以外の対応の窓口になるのがレジだから、きちんとできないとビーバーハウスの人に迷惑かけちゃうからね」
「な、なるほど……」
つまり、覚えることの80%は、20%の非常時のために使う、予備知識的なもの。しかも、常にお客さんが並んでる状態で(レジを打ちながら)、商品の問い合わせとかも的確に対応しなきゃいけないみたい。これは確かに、接客どころじゃないかも。あー、学校のこともいろいろあるのに。これはやるバイト間違えたかも……と、少しだけ後悔した。
【2013年5月接客ランキング結果】
53.39/Dランク
105位/118位(全社)
【結果考察】
今月はSランク取った人が一人、いるみたい。唯一取れるといっていたショーコさんではないらしい。誰だろう? 少し気になるけど、誰が取ったかというリストはあたし達バイトには、わからない。
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