風炎

裾野から見上げれば

風が巻き上げる炎はますます激しく

雨から遠ざかった

八月の真っ昼間

杉と白樺を食らって

とどまるところを知らぬ


土覆う草どもの支配と鳥たちの休息、

虫たちの命をもその身に取り込み

炎は村の際まで振り寄せる


いかにして水を放とうとも

烈しく橙に火の粉をまき散らし

それがまた新たな種となって

命なき火炎の子が燃え上がる


折からの強風

家という家

森という森を

飽くなき食欲でもって

呑み込み尽くす


食うもの食えば

料理はなくなる道理

三日三晩の暴食の末

火炎は静かなる長い眠りについた


次に目覚めるのはいつのことか

またすぐか遠い先か

すべては自然の気まぐれ

人には後始末しか残されていない

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