意識高い系魔法少女 "石北界"ー私が魔物退治にフレキシブルにコミットメントー
只野夢窮
第1話 留学/アメリカ/イノベーション
スタバでMocを開いて愚痴っているはた迷惑な男子大学生がいた。
「イノベーションの時代で留学しアメリカ西海岸に多数存在するイノベーティブなIT企業の
そう述べた私のスピーチは間違ってなかったはずなのに、なぜか留学への補助金がもらえなかった。TOIECの点数だって高いのに。ほかの連中よりは少なくとも意欲があるし英語もできる。そう愚痴り続けているのは
「でも絶対留学には行きたいなあ。だって大学時代にしかできない経験でしょ」
彼のMocの画面はまっさらである。とりあえず交流サイトを開いて、意識高い系のフォロワーたちと傷を舐めあう。親に金を出してもらうのは、彼にとってダサかった。本当に目標に向かって邁進しているのであれば多少ダサいぐらい我慢できそうなものだし、親はそれなりに金を持っていたが、しかし頭を下げるのは彼の選択肢になかった。国立に落ちたという申し訳なさも少しはあったかもしれない。
「バイトはなあ」
意識の高い彼が下賤な民衆相手にコンビニバイトなどできようはずもない。
「そんな君に朗報!楽でたくさん稼げる働き口あり!」
そんな彼だが、常識は多少有していた。いきなり話しかけられて、相手がぬいぐるみという事態に、動揺するぐらいには。
「......はあ。俺って疲れてるのかな」
目をこすってみるが、そこにいたのはまぎれもなく、ぬいぐるみだった。手のひらサイズのくまさんぬいぐるみ。
「疲れてないぞ!俺がしゃべってるんだ!」
「誰かいたずらしてるんでしょ......どっきりかな?」
補助金に落ちていらだっている時に、勝手にドッキリを仕掛けてくる連中は誰だ。多分テレビ局だろう。もちろん彼は下賤などっきり番組など嫌いである。あたりを見回しーあたりが、存在しないことに気付いた。あたり一面、なんか虹色のもやもやに包まれ、ここにいるのは彼とぬいぐるみ、あるのは自分の座っている机といすとMocだけだ。
「やあ信じてもらえたかな?」
彼が信じるまで三十分かかった。なんせ彼は意識が高いのである。
「さて、魔法少女の存在を信じてもらえたところで、なぜ魔法少女が存在して、なんで僕が君をスカウトしたのか、それを説明しようと思うよ。この世界には実は悪い魔法使いがいて、そいつがこの世界を支配しようとしてるんだ!名前をワ・ルイヤツというんだ!」
「なるほど、私はその人を倒すことにコミットメントし顧客のセキュアーな日常生活を守ればいいのか」
「コミ....え?」
彼は通じるかどうかにかかわらず横文字を使う。なんせ意識が高いのだ。
「と、とにかく契約には合意してくれるんだね!時給は3000円/時に敵の手下を倒せば追加ボーナスだよ!なにも最初からワ・ルイヤツの拠点に乗り込めとは言わない。最初は手下を倒してくれればいいんだ!」
「わかった」
時給3000円なら高いと思った。命の危険もある職業だが、彼はそんなことは考えていなかった。
「じゃあ、契約~~~~!!!!」
なんか虹色の光が降り注いだ。
「特に変わった気はしないけど」
「いや、見た目とか変わったら日常生活で困るでしょ。念じたら変身できるようになってるから。あと、魔法少女の必殺技は、その子に一番縁が深い道具になるんだけど......例えばピアノを弾いてる子はピアノの音楽で敵を倒すとかね。君の場合はその白い板みたいだ」
「Mocか」
「それでどうやって敵を倒すんだろうね?あ、じゃあ契約が済んだから元の場所に戻しておくね」
「ちょっと待て」
「どうしたんだい?」
「これ、いつ出勤なの?」
「それは君の近くに悪が来たら感覚的にわかるようになってるから、そしたら倒しに行ってね!」
「適当だなあ」
こうして魔法少女が一人生まれたのだった。
意識高い系魔法少女 "石北界"ー私が魔物退治にフレキシブルにコミットメントー 只野夢窮 @tadano_mukyu
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