第18話 鬼ごっこ終了

亜希子が男子生徒から逃げる。色々なところを走り、そして走っているうちに逃げ切ったようだった。後ろを見てその男子生徒がいないことを確認し亜希子は歩いている。


階段を慎重に下り、その男子生徒と他の男子生徒がいない事を確認する。廊下を歩き、近くにある曲がり角を曲がろうとした時、曲がり角から来た誰かにぶつかってしまった。亜希子は少しだけ跳ね返された。そしてぶつかってしまった人を見た。


「あ……」


亜希子の表情が恐怖に変わっていく。



「…ごめん!」


その人の顔を見て亜希子は逃げ出してしまった。その人も亜希子を追いかけて来たのだった。











純也が亜希子を探すが見つからない。どこに隠れたのか考えながら純也は廊下を歩く。


「亜希子さんが隠れそうな所…どこだ?」


ブツブツ呟きながら純也は歩いている。そして、ある階段付近にある曲がり角に来た。曲がり角の向こうに探している人がいる事はまだ知らない。純也が歩き続け曲がり角に差し掛かる。


純也の体に誰かの体が当たった。驚いたがその人を見てその驚きはすぐに消えた。


「あ、亜希子さん…」


純也が亜希子の名前を呼ぶ。亜希子は反応したがなにやら純也の事を不安そうな視線で見ている。ゆっくりと後ずさりをする亜希子。手を伸ばしそれを止めようとしたが、亜希子は後ずさりをやめない。


「…ごめん!」亜希子がそう言い、走り、その場から逃げ出した。純也が少し歩き、亜希子に手を伸ばし止めようとしたが止まる前に走り出してしまった。


亜希子が逃げ出してしばらくし、純也が亜希子を追い始めた。








約45分間も純也は亜希子を追い、亜希子は純也から逃げた。かなりの時間2人は走った。ランナーズハイというものなのだろうか、2人の足は止まる事は無かった。





必死で逃げる亜希子。階段という階段を上り曲がり角という曲がり角を曲がり廊下を走る。純也もそれを追う。何度か亜希子を見失いかけたが走る音を聞いてなんとか亜希子を見失わずに済んだ。亜希子と純也が4階の廊下を走る。2人が息をきらしながら階段を下り一気に1階に向かった。階段を下った先の曲がり角を曲がり職員室前の廊下を走る2人。職員室を通り過ぎ、亜希子が廊下を曲がる。昇降口の前を通り亜希子はまた廊下を曲がる。純也もそれを追い、廊下を曲がった。





「あれ…い、いない…どこいったんだ…?」


曲がった先の廊下に亜希子が走っているかと思ったが、亜希子の姿がなかった。純也が歩き亜希子を探す。男子トイレと女子トイレの前を通り過ようとした時女子トイレの中から、ドアを閉める音、そして鍵を閉める音が聞こえてきた。純也は立ち止まり、女子トイレに入っていった。




亜希子は、女子トイレのドアを閉め鍵を閉めた。純也がその音を聞いていた事をは知る由もない。亜希子は息を殺し純也が来ない事を祈っていた。その祈りは届かない。







女子トイレは空いている個室のドアは空いている。しかし1番奥の個室のドアだけ閉まっている。ゆっくりと歩きその個室へと向かう。女子トイレには純也の呼吸と中にいると思われる人の呼吸の音しか聞こえない。純也がドアの前に立つ。そしてドアを開けようとしたが、開かない。ガタガタ、とドアの動く音がトイレに響く。



「亜希子さん…いるんでしょ?中に…」

純也が優しく話しかける。



「純也くん…ここから出てって…早く!」


「違うんだ!俺は…俺は亜希子さんに伝えたい事が…」


「そう言って、さっきみたいな事するんでしょ…わかってるんだからね」


体育館倉庫で啓太が歩を襲おうとした事をまだ忘れていなかった亜希子。



「俺は…そんな事なんかしないよ。ただ本当に亜希子さんに想いを伝えたくて…お願い。鍵を開けてくれないかな…?」



そう言われ亜希子が少し考える。数分間無言の空間が広がる。純也はドアの前で返事を待っている。



「…本当に、しない?」


「あぁ!本当だよ。信じて…俺の事を…」












ドアの鍵が開く音が部屋に響く。そして亜希子がドアをゆっくりと開けた。純也が亜希子を見る。あの数分間でいろいろ考えたのだろうか、亜希子は泣きそうなっている。そして亜希子と純也が向き合った。



「開けてくれて、ありがとう。それで…なんだけど…。俺の実は…」


「…うん?」



「俺、亜希子さんの事が好きだ。こんな所で告白してごめんね…亜希子さん」




それを言ったその時、亜希子が純也に抱きついた。



「じ、実はね私もなの。ずっと言いたかったんだけど…言えなくて。それと逃げちゃってごめんね。ルールだから仕方ないのもあるけど…」


「俺ら、両思いだな。俺も言えなくてごめんな。亜希子さん」


「さん付けしなくてもいいよ?呼び捨てでもいいよ?私たち、カップルなんだから!」微笑みながら、亜希子がそう言う。純也もそれにつられ微笑む。



純也が亜希子の唇にキスをした。そのキスは長く、熱い。2人の唇が離れる、しかしまたキスをした。今までの不安や心配事が無くなっていく。




「ね、ねぇ…その…純也くん?」


「ん?どうした?」


亜希子がジャージのファスナーを開けていく。そして中の体操着が見える。ジャージを洋式トイレの蓋の上に置く。亜希子は体操着を脱ぎ始める。


「え…え⁉︎な、何してるの亜希子⁉︎」



体操着を脱ぎ、亜希子の下着が純也の視界に入ってきた。亜希子の下着は派手めなピンク色。いつもは白色だがこの日だけ特別に新品の下着を買ってきたのだった。



「あ、亜希子って、積極的なんだな…」


純也が亜希子をゆっくりと洋式トイレの蓋の上に座らせてキスをしながら亜希子を押し倒していく。


「し、していいよ…?ルールだから…」


「う、うん。わかった」



純也がゆっくりと亜希子の下着に手を伸ばし胸を触ろうとした。その時。






校内に予鈴が鳴る。時計は17時を示している。全校鬼ごっこ終了の合図だった。



「あ…終わっちゃったね。この続きは…純也くんの家でやろう?」



「そうだな…。そうするか。逃げ切りおめでとう、亜希子」


亜希子は犯されてはいないのでセーフだった。2人の体が離れ、それぞれ服装を整える。亜希子はジャージを着て、「体育館に集合するように」と放送が入り、2人は別々の廊下を歩き体育館へ向かった。亜希子は歩が逃げ切れたのかは知らない。体育館に行ってみないとわからない。




亜希子は体育館へと歩を進めた。

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