2章 冒険の始まり?

EP3-冒険者にはならない

「ねぇ、カズマさん! 私もそれ欲しいんですけど。

 日本を覗いてる時から気になってたのよ」



「ダメだ、お前はどうせロクなことに使わないだろ」


 俺とアクアが朝からソファーで言い争いをしている。

 事の発端は、俺がアクアにある物を与えてないことから発展している。


「ねぇ、いいじゃない! 私だけ仲間はずれにしないでよ! エリスに言いつけるわよ!」


「やめろ!エリスにこれ以上迷惑をかけるな」


 朝からそんなやりとりをしているせいで目を覚ましたらしい、めぐみんが目をこすりながらやって来る。


「朝からお二人は元気ですね。 うるさくてかなわないのですが」


「悪いなめぐみん、アクアが言うことを聞かなくてな」


「違うわよ! 聞いてめぐみん、この私がお願いをしてるのにカズマさんがいじめるのよ、あれかしら好きな子にはイタズラしたくなる年頃なのかしら」


「あ?もう一回言ってみろ、なんで年齢不詳に恋するんだよ」


「ちょっと!! 言ってはいけないこと言ったわね!

 もう、頭にきたわ! エリスを呼んでくるわ!」


「アクア、エリスなら寝てますよ?」


 そうなのだ。

 実はあの後、エリスが天界に帰ろうとしたら帰れなくっていた。どうやらペナルティを食らったらしい。

 エリス祭に加え、今回と、許可なく姿を見せたことが原因らしい。


 魔王を倒すまで帰ってくるなと。叱責されたみたいだ。

 せめてもの慈悲と、エリスとクリスには好きな時に姿が変われるようにはしてくれたらしい。


 さすがに不憫に思った俺は、エリスへと近づき、

 –––そんな装◯で大丈夫か?

 と、親切に聞いてやったら、ゴッドブローをされた。

 ・・・冗談が通じない女神様だ。

 アクアに同じことを言ったら、

 ––––私を誰だと思ってるのよ。答えはもちろん一番いいのを頼む。

 と言われた。腐っても日本担当なだけあるな。


 そんなわけで、居場所をなくしたエリスはここに住むことになっているのだ。



 –––リスー? エリスー? 入るわよー?

 あれ、なんだ起きてるなら返事しなさいよ。」


「先輩、おはようございます。

 すみません。朝はこの世界の人たちに向けて、今日1日が良い日であるようにと、お祈りする時間でして」


「あら、それは良いことね。

 終わったら下に来てもらえるかしら」


「あ、もう終わりましたので行きますよ」


 女神でこうも違いがあるのか。

 益々、残念な女神に見えてきた。むしろ最近は女神ではないよう思えてきた。


「ねぇ、聞いてエリス。

 カズマさんが私にだけ携帯くれないの。

 どうしてかしら」


 ピロリン。


「・・・?エリスなんの音?」

「あ、すみません。メッセージが・・・めぐみんさんが爆裂散歩行く人探してますよ?あぁカズマさんたら酷い。勝手に行ってこいだなんて。 先輩行ってあげたらどうです?」


「・・・持ってない」


「え、ごめんなさい。聞こえなくて、なんて言いましたか?」


「・・・う、うわぁぁぁぁぁぁぁんん! エリスまで持ってたぁぁぁぁ」


アクアがずっと欲しがっていたもの。

それは、冒険もせず俺が作っていた携帯だった。

俺はこの商才を生かし、冒険には出ないのだ。


「かじゅまさあぁぁぁん、私にも私にもちょうだいよぉぉ!! 皆して私のいないところで話さないでよぉぉ」


「おい、静かにしろ。くっつくな!! ああ、もう。しょうがねぇなぁぁぁぁ! ほらこれやるから。俺のだけど良いだろ。設定もしてあるからもう使えるぞ」


渡した瞬間、プレゼントをもらった子供のような無邪気な笑顔を浮かべくるくると回りだす。

ピタッと止まるとこちらを向き、らしくもない笑顔で言ってくる。


「ありがとね、カズマさん! 早速めぐみんと爆裂散歩行ってくるわ!」


爆裂爆裂とか、物騒なことを繰り返しながらめぐみんのもとへとかけていった。

ああ、せっかく設定頑張ったのにな。

もう一回やるかぁ。


「ふふっ、カズマさんは何だかんだ優しいのが良いところですよね。 最初から優しくしてあげれば良いのに」


「ダメだ、あいつは甘やかすと何かを絶対にやらかすのが定番だ」


俺がやれやれとソファーに腰を下ろすと、エリスも隣へ腰をかけてくる。


「あれ? 部屋に戻らなくて良いんですか?」


「たまには、カズマさんが普段何をしてるのか見てみようかと思いまして。 気にしないでください。 ここで本を読むだけですので。 お邪魔でしたら部屋に戻りますので」


「邪魔だなんでとんでもない! あ、ちょっと待っててください」


「? はい。」


早速俺は台所へと向かう。

実は最近、良い紅茶を仕入れたのだ。

好きかどうかは知らないが、一般的に女の子はこういうのが好きだという。


「お待たせしました。 冷えると大変ですので、お口に合うかわかりませんがどうぞ」


「わぁ!ありがとうございます! すごく良い香りがするなぁ、って思ってたところだったんですよ。 ありがたく頂きますね。 うん!美味しいです! あぁぁ、至福のひと時ですね。このまま横になりたいです。」


「なんだかエリス様のオフを見てる気がします。そんなくつろいだ姿見せて大丈夫ですか?」


俺の中でのイメージが徐々に変わっていく。

勿論いい意味でだ。

完璧かと思っていたが、中身はやっぱり普通の女の子だ。


「皆さんなら別に構いませんよ。 加えて先輩なんかは普段の私を知っているわけですし。たまにはくつろいでも良いじゃないですか!」


「眠くなったらちゃんと布団で寝てくださいよ? 風邪引かれたら困るんですから。 あ、良かったらこれもどうぞ。 毛皮で作った毛布です。」


「全く。私の親みたいなこと言いますね。 貰っておいてなんなのですが・・・カズマさんって冒険者なんですよね? 魔王を倒すのが目的なんですよね? 職人を目指してるわけじゃないんですよね?」


変なことを言いだすもんだから、教えてあげることにした。間違っていることは言ってないつもりだ。


「危ないじゃないですか。魔王討伐なんか行きませんよ? 俺はこの商才を生かし大富豪になるんです。 魔王討伐は、他のチート持ちがやってくれますよ。」


「えええええええ!!!!」


エリス様が叫びながら飛び起きてくる。

何か間違ったことを言ってしまっただろうか。


「エリス様静かにしてください。近所迷惑ですよ!」


「す、すみません。 で、でもカズマさんの口から今信じられない言葉が」


「もう一度言いましょうか? 俺、魔王討伐には行きませんよ?」



「ええええええええええ!!!!」


本日二度目の絶叫である。


「許しません! 許しませんよカズマさん! 言うこと聞かないとビンタしますよ!」


「ビンタしたらスティールしますよ?」


「・・・と、とにかく! 魔王討伐は転生してきた人の定めなのです! 女神が二人もいるんですから大丈夫です! ほら行きましょう!」


「だが断る」


ビンタじゃなくて泣いた。






______

しょうがないから、次週より魔王へ向けて出発します。

出てきてない人も出すようにします。

出てこなくても謝らないです。

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