第9話 7月4日 「正しい選択」
七月四日
真が戻ってから、季節が一つ過ぎました。状況はあまり好転してません。いえ、かえって悪くなりました。完全に引きこもってしまいました。食事やトイレ、お風呂なんかは、お母さんが仕事に行っている間に済ませているのでしょう。私が居る間は、二階の自分の部屋から一歩も出てきません。時折、何かが動く気配が天井から降ってくるので、生きているということはわかりますが。
原因は、一ヶ月ほど前に病院の心療内科に連れていこうとしたからです。
「真、一度病院に行ってみないかな。専門の先生だったら、良い治療法もアドバイスしてくれるだろうし」
今思えば軽率だったのかな。あれだけあせりは禁物だって、自分に言い聞かせてたのに。でもふさぎ込む真を見てたら、何とかしてあげたいって気持ちが抑えられなかったの。結局、私の提案は悪手でした。「余計なことするな」と、もの凄い剣幕で拒否されました。そしてその日から、部屋に鍵がかかるようになりました。
思えばあのとき、無理にでも病院に連れていけば良かったのかしら。今でもわかりません。かしこ
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