第10話 10月11日 「壁のへこみ」

十月十一日

 真の様子は、ますます酷くなる一方です。常に苛々しているみたいで、部屋の床や壁をドンと鳴らすようになりました。朝夜かまわずに、です。きっと昼間も叩いているのでしょう。台所の壁にへこみが出来てましたから。深夜になると、玄関をこっそり開けて外出しています。

「どこに行ってるの」と尋ねたのですが、無視されました。こっそり後をつけてみたら、ランニングをしているみたいです。急に全速力で走ったかと思えば、息を切らして道路わきの草むらに転がる。また起き上がる。メチャクチャな走りです。

 恐らくあの子も苦しんでいるのでしょう。トンネルの出口はもうすぐなんだ。そう自分に言い聞かせています。かしこ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る