変化



6月に入ると同時に、衣替え。制服も冬服から夏服へと切り替わった。

今日も理緒は、杏子と学校に一緒に登校する。


「 夏服だと、今日寒いよね。少し」

「 そうね。」

「 杏子、ベスト着てきたんだ。」


理緒は、杏子が半袖シャツの上から指定の紺のベストを着てるのを見て言う。


「 うん。だって寒いじゃない。理緒は着てなくて平気なの?」

「 俺一人だけ着てたら、恥ずかしいかなと思って。持ってきてはいるけど。」

「 着なさいよ。 また熱出るわよ。」

「 ありがと。そうする。」


杏子の忠告に素直に従い理緒は、鞄からベストを出して着る。


「 着るのと着ないのじゃ、えらい違いだね。」

「 そりゃそうよ。理緒が寒くないならいいけど、寒いならちゃんと着なくちゃ。女の子は、体冷やしちゃいけないって言われるでしょ?」

「 うん。」



杏子の説教を聞きながら、理緒は改めて男と女の違いについて考えていた。


違うところは、いくらでもある。

例えば、手のひらに触れた時の感触。

男の子の手は、ゴツくて厚い。女の子の手は、柔らかい。

体つきも違う。男の子は、がっしりとしてる。女の子は、丸みを帯びて柔らかい。

理緒は、そんな事を考えながら、歩いていた。



「 おはよう。理緒。」


教室に入ると、涼が笑顔で挨拶してくる。


「 おはよう。涼。寒くないの?」

「 このくらいは、平気。 」

「 ふーん。」

「 理緒は、ベスト着てきたんだ。」

「 うん。家を出た時は着てなかったんだけど。寒いし。杏子に寒いなら着なさいって言われたし。」


理緒は、話ながらじーっと涼を観察していた。


「 どうした。人を観察して?」

「 あ いや。冬服の時はそう思わなかったけど、涼って結構がっしりとした体つきだなって思ってさ。」

「 理緒もそう思うんだ。母さんや姉さんも体つきがっしりしてきたって言うんだよ。ここ一年で身長は伸びて、声変わりしたくらいでそんなに、変わったって自覚ないんだよ。おれは。」


涼は、頭をポリポリかきながら言う。


「 声変わりで十分な変化だと思うよ。」

「 理緒も最初に会った時より、少しだけど女の子らしくなってきたよな。」

「 変わったのは、髪型だけでしょ。」

「 それだけでも、十分な変化だよ。最初の頃の理緒本当に、男の子みたいだったんだよ。」

「 あ〜 そういえば。」


理緒は涼と出会った頃を思い出す。服装に、気をつけてなければ、男の子に間違われていた。

それが嫌で服装を変えたり、髪を伸ばす決心をした。


「 自分じゃそんなに変化してないって思っても、人からみたら、変化してるの分かるもんなんだね。」

「 だな。でも、おれとしては、理緒にはこれ以上可愛くなられたら困る。」

「 なんで?」

「 他の奴に狙われる。」

「 大丈夫。狙う人いないって。」


理緒は根拠もなく暢気な事を言ってるが、最近クラスの男子の間では人気のある理緒。

それが、心配なのに全然気にしてない理緒に、涼はこっそりため息をついた。

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