25 涼だけだもん。

朝、学校に行く前。理緒は、昨日香苗にしてもらったように、髪を結んだ。


「 髪が、今より伸びたらまた、髪型変えなきゃいけないな。 」


( 杏子に、髪弄らせてって、その内言われそうだなあ。)


理緒は、毎朝、ハグしながら頭を撫でます杏子を思い浮かべながら、心の中で呟く。


朝食を済ませて、学校に向かう理緒の後ろから、ダダっという足音が聞こえる。


「 おはよう。理緒。今日は、一段と可愛い。」


ムギュっと、杏子が抱きつく。


「 んにゃ、おはよう。杏子 。」

「 可愛いね。どうしたの、この髪。」

「 昨日、お母さんに教わった通りに、結んだの。伸びかけで、邪魔だから。」

「 そうなんだ。 ねぇ、このまま学校行っちゃ駄目?」

「 駄目。 俺が、歩けない。」

「 そうだね。」


杏子は、理緒から離れる。二人は、並んで歩きはじめた。


「 桜庭。理緒の髪を見たら、どんな、反応みせるかな?」

「 さあ? 似合わないとか言うんじゃない。」

「 えー いくら、なんでもそんな事言わないでしょ。」

「 言わないと思うけど、涼は、嘘言わないから。」

「 確かに。馬鹿がつくくらい、正直者だからね。」


二人は、そんな会話を交わしながら、学校の門をくぐった。



「 おはよう。」


杏子が挨拶しながら、教室に入る。理緒は、杏子の後ろをトテトテとついて、入る。


ちなみに、身長140センチジャストの理緒が、歩く姿は、可愛いのでクラスメイト全員の癒しになっている。


「 林原さん。今日は、一段と可愛いんだけど」

「 小動物だよ。小動物。ウサギとかリスとか。」


クラスメイトは、本人に聞こえないよう話してるつもりだが、理緒の耳にはしっかり届いてる。身長が、低い事を気にしてる理緒からすれば、皆が、言う。可愛いや小さいは、悪口に聞こえてしょうがない。


理緒は、ムスッとした顔で、自分の席についた。


「 おはよう。理緒。可愛い髪にしてるのに、なんでそんなに機嫌悪いんだ?」


理緒の目の前に、涼が現れてそんな事を言う。


「 だって、皆が小さいとか可愛いって言うだもん。」

「 誉められてるんだから、いいじゃないか。」


涼は、理緒を諭すように、話す。


「 俺に、小さいとか言っていいのは、涼だけだもん。他の人に言われたらムカつくの。」

「 何気に、嬉しい事言ってくれるけど、小さいとか言われて、怒っちゃ駄目だからな。」

「 分かってるもん。そんな事。」


( 桜庭。お前一人で、林原さん占領してんじゃねーよ。)


二人のやり取りを見ながら、その場にいたクラスメイト全員は、そう思ったとか。

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