24 理緒のジレンマ。


「 鬱陶しい。切りたい。」


洗面所で、一人呟く理緒。髪を伸ばしだして、一ヶ月半近くたち少々、髪が鬱陶しくなりはじめた。

体育が終わった後、髪が、汗で貼り付いたりするし、耳にかかる髪がサワサワと当たって気になったりして、切りたくなる。


そんなに、邪魔なら、ピンでとめるとかしろよと、涼に言われて試したが、上手くいかない。


「 う〜切ったら多分、後悔するだろうしな。」


理緒は、鏡の前で髪を弄りながら、どうしたもんかと悩む。


「 理緒ちゃん。どうしたの? 髪をいじって?」


洗濯かごを抱えて、洗面所に入ってきた香苗に、そう訊かれた理緒は、答える。


「 お母さん。髪を邪魔にならない方法ないですか?」

「 鬱陶しくなってきたんだ? 」

「 うん。 でも、結ぶほど長くないし。」

「 そう? 髪を弄りたいから、リビングにいこうか。」

「 ここじゃ駄目?」

「 椅子に座ってやったほうが、やり易いのよ。」

「 じゃ、リビングにいく。」


理緒は、自分のブラシやヘアピンと買っておいたゴムを持って、リビングに移動した。


「 さて、どうしようかな?」



香苗は、理緒の髪を梳かしながら言う。


「 ピンで止めても、毛束の量が少ないとピンが落ちてくるしね。」

「 でも、結ぶほどの長さないよ。」

「 そりゃ、きっちり結ぶにはね。でも、こうやって、すると。」


香苗は、理緒の頭頂部に近い部分を一部纏めはじめた。


「 はい、出来た。」


香苗は、そう言って、理緒に鏡を渡す。


「 なんか、うさぎさんの耳みたい。」


頭頂部に近い部分が、左右同じように一部だけ纏めてある。


ツーサイドアップテールと呼ばれる髪型である。


「 うふふ。一度やってみたかったのよ。この髪型。学校に行く時は、ヘアゴム黒じゃないと無理だけど、休みの日とかリボンとかつけたら可愛いかもね。」

「 えっリボン。それは、絶対に嫌。」

「 涼くんに付けてって言われたら、どうするの?」

「 えー。んー。」


髪を切るか切らないかというジレンマから、解放されたと思ったら、今度は、髪に、リボンを付けるか否かというジレンマに陥った理緒だった。




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