21 幽霊騒動 前


ゴールデンウィークが、終わり学校生活もいつも通りに戻った頃、生徒の間では、ある噂で持ちきりだった。


「 ねぇ。理緒知ってる? プレハブ校舎の前で、幽霊が出たって噂があるの?」

「 知ってるよ。昨日からもう五回目だよ。その話。」


昼休み。杏子から最近、噂になっているまた、幽霊の目撃談を聞かされて、辟易とする。

昨日は、部活の先輩や後輩から散々聞かされ、今朝は、涼やクラスの女子から聞かされて、最早耳にたこである。


怖いものが、大嫌いな理緒からしてみればもう辞めてほしいところだ。


「 五回も聞いてるなら、知ってるよね。プレハブ校舎の前。夕方五時になると必ず、血まみれの女子生徒が立っていて、生徒に、「私、綺麗 ?」って訊いてくるんだよね。で、「 綺麗」って答えるとニタアって笑ってお礼言ってくるんだって。」

「 うん。その通りだよ。 もう、俺の耳に、たこが何匹もぶら下がりそうだから、辞めて、その話。」


理緒は、耳を塞いでそう言う。


「 嘘。怖いから辞めてほしいんでしょ。涙目になってるわよ。」


杏子は、意地悪な笑みを浮かべて言う。

図星をつかれた、理緒は白状する。


「 そうだよ。俺は、お化けとか幽霊とか怖いもの大嫌いなんだよ。」

「 最初から、そう言えばいいのに。意地はらずに。」

「 そうだけど。杏子、俺にそんな話してきてどうするの? まさか、幽霊退治でもするつもり?」

「 チッチ。そんな事するわけないじゃん。」


杏子は、肩を大げさにすくめて言う。


「なら、何なの? 捕まえるの?」

「 フッフッ。いいとこ突いてるね。ワトソンくん。」

「ワトソンくんって、俺の事? ねぇ。てか、何いきなりホームズになってんの。」


理緒のツッコミをスルーした杏子は、パイプを吸う仕草をしながら、そんな事を言う。


「 自称幽霊を捕まえるのだよ。」

「 自称幽霊??」

「 そう、自称幽霊だよ。 時に、ワトソンくん。あのプレハブ校舎には、何の教室があるか知っているかね?」


ノリノリの杏子の問いかけに理緒は、校庭の隅に、ポツンとあるプレハブ校舎を思い出す。


「 えーと、生徒会室と物置部屋と演劇部の部室だっけ。」

「 そうだよ。ワトソンくん。」

「で、自称幽霊さんの正体を知っているの?」

「 知っているさ。勿論。犯人は、演劇部の人間だよ、」

「 そうなの。で、その演劇部の人がそんな事してんのさ?」

「 さあ? それは、本人に訊くしかないね。」

「 それって、俺達が訊いて、生徒会に説明するの?」

「 そっ、今日の放課後早速調べます。」

「 マジで。」


こうして、理緒は、何故か幽霊騒動を調べる羽目になった。

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