第19話 おにゃんこさんは、ハンター。
5月。ゴールデンウィークの後半連休を楽しんでるのは、何も人間だけではない。
林原家の庭で、にゃふ〜んとゴロゴロする一匹の猫。おにゃんこさんもこの連休を楽しんでいた。
まあ、おにゃんこさんの場合連休がなくても、いつも楽しい毎日なのだけど。
「 あ〜また、おにゃんこさんが!もう。」
「 落ち着け理緒。」
涼と遊びに行って帰ってきた、理緒が怒鳴る声と冷静な涼の声が、門の方から聞こえてくる。
おにゃんこさんは、ゴロゴロするのを辞めるとノシノシと門の方へ向かう。
デニムのシャツワンピース姿の理緒が、足元の茶色いネズミや雀を見ながら、半泣きになっている。
おにゃんこさんは、見て見てと言うように鳴いてみせる。
「 んなな んなん。」
「 おにゃんこさん。お前の仕業か? これ。」
涼は、哀れな姿になったネズミや雀を示して、おにゃんこさんに訊いた。
「 んな。」
おにゃんこさんは、えっへんと言うように鳴いてみせる。
「 えっへんじゃないよ。 なんで、狩りするだけ狩りして、ネズミさんや雀さん放置するんだ! 埋めてあげなきゃ可哀想じゃないか!」
半泣きで、理緒はおにゃんこさんを叱りながらネズミと雀を庭の隅に埋めると、手を合わせる。
「 ごめんなさい。 ネズミさん。雀さん。成仏してください。」
「 んなー んー。」
おにゃんこさんは、不満げに鳴いて理緒に抗議する。ネズミや雀を埋めないでと。
「 んなーじゃないよ。んなーじゃ。全く。おにゃんこさんも、ごめんなさいして。」
「 無理言うなよ。それに、狩りは、猫の本能なんだし。 なーおにゃんこさん。凄いな。狩り上手なんだな。」
「 んなな。」
でしょと言わんばかりに、おにゃんこさんは、涼に向けて鳴く。
理緒は、ジト目で涼を睨みながら話す。
「 頼むから、誉めないでよ。おにゃんこさんの事。この前も、お兄ちゃんが、誉めた日の夜に、コウモリさんを、生け捕りにして帰ってきてね。家中、コウモリさん飛び回って外へ出すの大変だったんだからね。」
「 コウモリが。飛び回る。やだな。それは。」
涼は、バサリバサリと飛び回るコウモリを、想像して少し嫌な気分になった。
「 おにゃんこさん。優秀なハンターなのは、わかった。頼むからコウモリを、捕まえるのは、やめような。男同士の約束だ。」
「 んなー。」
おにゃんこさんは、不承不承といった感じで鳴いた。
「 わかったなら、いいんだ。」
涼は、おにゃんこさんを撫でる。
「 コウモリさんを連れてこなくても、別な物捕まえそうだけど。」
理緒は、ボソリと呟く。その呟きをおにゃんこさんが、聞いていたかどうかは、わからない。その夜、林原家は、コウモリ騒動よりも大騒動になった。
「 おにゃんこさん。何くわえてんのー。」
「 こっちくんなー。頼むから。」
おにゃんこさんが、捕まえたのは黒くて頭文字に、Gの付く生き物。
「 おにゃんこさん。頼むからゴキ○リは、もっと駄目だから。絶対ぜーったい捕まえないで〜。」
「 んなーん。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます