番外編 寝癖。


母・香苗の趣味により、少女趣味なピンクの可愛らしいベッドで眠る理緒。

その理緒の側で寝ていた、おにゃんこさんは起きるなり鳴きはじめた。


「 んなな。んなな。」



おにゃんこさんは、毎朝、寝ている理緒を鳴きながら前足で、ポシポシと叩いて起こす。


「 んーおはよう。おにゃんこさん。」


ノロノロと理緒は、起きるとおにゃんこさんに挨拶する。


「 んなー 」


おにゃんこさんも挨拶するように鳴く。

理緒は、ベッドから出ると洗面所に向かう。

洗面所に入ると既に、制服に着替えた拓人がいた。


「 おはよう。お兄ちゃん。」

「 おはよう。理緒。 寝癖が、今日は一段と凄いことになってるぞ。」

「 マジで。本当だ。 最悪〜」


理緒は、鏡を見てそう叫ぶ。理緒のショートの髪は、ボサボサを通り越して、逆立っていた。 まるで、スーパー○イヤ人である。


理緒は、寝癖直しスプレーをシュッシュッとかけて髪をとく。ある程度は、直ったが所々、みょんと跳ねてる。


「 うう。時間ないのに。……そうだ。」


理緒は、寝癖は、濡らして直すと良いと聞いたのを思いだして試す。跳ねた部分に水で濡らしてドライヤーをかけながらブラシをかけた。


「 これで、どうだ !」


ドライヤーを止めて鏡を見る。


「 なんで、ここだけ直ってないんだよ。」


理緒は、アンテナの如くみょんと跳ねたままの前髪を恨めしく睨んだ。


「 お母さんに、相談するか。」


とりあえず、部屋で、制服に着替えてから理緒は台所に向かった。


「 おはよう。理緒ちゃん。前髪跳ねたままよ。どうしたの?」


台所に入ってきた理緒に、そう訊いてくる香苗。理緒は、答える。


「 お母さん。寝癖が、どうしても、直りません。どうしたら、いいですか?。」

「 水で濡らして直す方法とか試したの?」

「 やったけど、直りません。」

「そう。ちょっと待っててね。」



香苗は、台所から出ていくとしばらくして、手にブラシとヘアピンを持って戻ってきた。


「 ちょっと、動かないでね。」


香苗は、ブラシで理緒の前髪をといて分け目をつけると、ヘアピンで前髪をとめた。


「 こうしたら、寝癖ついてるのわからないでしょ。」

「 凄い。お母さんありがとう。これなら、まわりにバレないよ。寝癖。」

「 ふふ。どういたしまして。それより早くしないと学校遅れるわよ。」

「 うぇ、もうこんな時間だ。」


理緒は、あわてて用意された朝食を食べると鞄を持って、家を飛び出した。


「 おはよう。理緒。ん? 前髪ピンで、とめてどうしたん? イメチェン?」


涼は、教室に入ってきた理緒がピンで前髪をとめてるのに、気づいてそう訊いた。


「 まあ。そんなとこ。」


理緒は、そう言って誤魔化す。まさか、寝癖がついてるのをバレたくなくてピンで、とめてるなんて死んでも言えない。


「 会った時より、髪伸びてるし。邪魔になってきたのか?」

「 うん。でも、髪伸ばそうって決めたからあんまり切れないんだよ。」

「 そうなんだ。そうやって、前髪とめてると雰囲気違って、可愛いよ。」

「 そう? じゃ、明日もこの髪型にしようかな。」


へへと笑いながら、言う理緒。


( 寝癖隠す為だったけど。涼に褒めてもらったから明日からこの髪型にしよう。)


寝癖が酷くて、最悪だった朝だけど、その結果、髪型を褒めてもらえてラッキーな理緒は、一日中ご機嫌だった。







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