第17話17 本当は嬉しい。
「 理緒。足どうしたんだよ。」
朝、理緒が学校に着くなり、包帯が巻かれた右足を見て涼は、驚いてそう訊いてきた。
「 おにゃんこさん踏みそうに、なって避けようとしたら、転んで捻挫したんだよ。」
「 理緒は、ドジっ娘だな。本当に。」
「 うるさいな! どうせ、俺は、ドジだよ。」
理緒は、そう言ってむくれる。
「 ゴメン。むくれるなよ。転んだのも、おにゃんこさん踏んじゃいけないから、避けたせいだもんな。エライエライ。」
「 みきゃー。また、そうやって、子供扱いする。」
理緒は、プリプリ怒る。涼には、子猫が全身の毛を逆立て、シャーっと怒ってるように見える。
理緒が、小さいから余計にそう見えるのだけど、本人に言ったら益々怒りそうなので、やめておく。
「 はーい。そこで、私の理緒を虐めてる人。用事が、終わったならそこ退きなさい。」
杏子が、そんな事を言いながら二人の間に割り込んでくる。
「 笹木。理緒がいつから、お前のになったんだよ。」
「 さっき。大体、桜庭ばっかり理緒を占領してズルい。私だって、理緒を占領したいのに。」
「 だからといって、邪魔する理由には、ならん。」
「 知りませーん。そんな事。ほら、さっさとあっち行きなさいよ。」
杏子は、シッシッと涼を追っ払う。
「 おれは、野良犬かよ。はあ、理緒また、昼休みな。」
「 うん。」
涼は、そう言って自分の席に行った。
「 邪魔者は、いなくなった。理緒補給したい放題よ。そりゃ、抱きついたる。」
杏子は、言うなり理緒に抱きついた。
「 杏子。俺に抱きついて、楽しい?」
「 楽しいかどうかは、わからないけど。落ち着くのよね。なんかいい匂いするし。」
「 お母さんも、同じような事言ってな。俺は、わからないけど。」
理緒は、言いながらスンスンと自身で嗅いでみるが、やっぱりわからない。
「 そう。今日の放課後、桜庭に言ってみな。今の話。」
「 う、うん。してみる。」
「 明日、桜庭が、どんな反応したか教えてね。うふふ。」
「 ?分かった。」
理緒は、杏子の意味深な笑いが、気になったがあえて突っ込まなかった。
放課後、理緒は早速、朝の話を涼にしてみた。
「 笹木が、そんな事言ったのか。」
「 うん。意味がよくわからないけどね。」
肩をすくめながら理緒は、そう言った。
「 なあ。理緒。」
「 な〜に?」
「 抱き締めたいって言ったら怒るか?」
「 いや、怒らないよ。もしかして、確かめたいの?」
「 うっまあ。」
「 別にいいよ。」
理緒がそう言うと、涼はそっと理緒に抱きついた。
「 ……確かに、いい匂いするな。甘いような。」
「 そう? それより、俺は、恥ずかしい。」
「 もう少しだけ。我慢してゴメン。」
「 んも〜。あと少しだけだよ。本当に、恥ずかしいんだからな。」
理緒は、口ではそう言ったが本当は、嬉しかった事は涼に秘密にしていた。
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