第15話15 遠足
4月の終わり。第一中学は、毎年この時期に、遠足に行っている。
理緒達二年生は、地元の自然公園までの数キロを学校から歩いて行く事になっている。
「 あーもう、しんどい。なんで、二年はなんで歩いて行くのよ。」
「さあ? 」
理緒は、杏子と二人並んで歩いてた。
杏子は、文句を言いながら歩いている。
理緒も、杏子のように口には出さないが、少し、しんどいと思っている。
理緒の今の身体は、小さい上に体力が、ない。だから、ちょっとの事ですぐ疲れるから、理緒にとって悩みだった。
「 理緒は、大丈夫なの? しんどくないの?」
「 今は大丈夫だよ。 ちょっとだけ、しんどいけど。」
「 そう、でも風邪から復活したばかりだから、無理しないでね。」
「 わかってる。」
それから、しばらく二人は、目的地に着くまで黙って歩いていた。
「 あーやっと着いたね。」
「 俺もう、今日分の体力使い果たした気分だよ。」
「 私も 」
生徒達の息が落ち着いたところで、学年主任の先生が話しはじめた。
「 はい。お疲れ様です。これから、お弁当を食べたら十四時まで、風景のスケッチと俳句作りをして下さい。 それぞれ、美術と国語の課題ですよ。それを忘れないように。集合時間は、十四時十分です。では、解散。」
生徒達は、銘々グループにわかれ思い思いの場所に行く。
「 理緒、あっちいこ。」
「 うん。」
理緒は、杏子と一緒に移動する。杏子が、選んだ場所は、芝生が植えてあり寝ころんだら気持ちよさそうな場所である。
「 学校の行事じゃなかったら、昼寝しそうなんだけど、俺。」
「 私も、晴れてて気持ちいいもんね。」
二人は、学校指定のスクールバッグを下ろすとベンチに座る。
お弁当を出すと、二人はいただきますと言ってから、食べはじめる。
「 理緒、美味しそうなお弁当だね。」
杏子が、理緒のお弁当を覗いてそんな事を言う。
おにぎりに、唐揚げ、卵焼きにミニトマトなど色々なおかずが並んでいる。
「 お母さんが、張り切って作ってくれたんだ。おにぎりは、俺も作ったけど。」
「 へー。そうなんだ。」
「 杏子のお弁当も美味しそうだよ。」
「 うちは、おばあちゃんが作ってくれたんだ。 煮物とかあるから、おかず茶色ばっかだけど、好きなんだよね。おばあちゃんの煮物。」
「 そうなんだ。」
理緒は、そう言っておにぎりに、かぶりつく。
モグモグと咀嚼して飲み込む。杏子の話を聞きながらお弁当を食べながら、ふと、思った。
( 当たり前のようにこうやって、友達と呑気に、お弁当食べてるけど俺って、あっちの世界にいた頃、戦争の最前線にいたんだよな。
普通の事出来るって、よく考えたら贅沢だよな。感謝しないとね。)
「 理緒、話聞いてる?」
「あっごめん。聞いてなかった。考え事してて。」
「 別に、いいけど。この後スケッチさ。桜庭と一緒に、するでしょ?」
「 うん。 杏子も一緒だよね?」
「 いいや。 私は、あっちでのんびり描いてるからね。 桃宮市が一望出来るのよ。」
「 別に、ここでもいいじゃない。」
「 二人のいちゃ げふん。二人の邪魔しちゃ悪いからね。」
「 セリフの前半にツッコミを入れたいけど、杏子がそうしたいなら、いいよ。」
理緒達は、食べ終えたお弁当を片付けて、スクールバッグから紙と筆記具を出した。
杏子は、荷物を持って、理緒の側から離れた。
「 笹木の奴、あんな所で何する気だ?どうせ、おれ達の観察だろうけど。」
理緒のもとにやって来た涼は、二人を見下ろせる位置に、陣取った杏子を見て呆れていた。
「 俺らのイチャイチャを見るみたいな事言いかけてたから、多分そうだと思う。」
「 まあ、アイツの野望は、放っといてさっさとしないと、時間がなくなるから、始めようぜ。」
「 そだね。」
理緒と涼は、隣り合って座るとスケッチをはじめた。
「 そういや。俳句もあるんだっけ?」
「 あるな。」
二人は、会話を交わしながら、風景のスケッチをしていた。
「 出来たけど。変だよ。あんまり、絵得意じゃないからな。」
「 そうなんだ、見せてくれよ。」
「 えっやだ。」
理緒と涼は、そんなやり取りをしてる最中杏子に、じっくりと観察されていたのは、別の話である。
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