第9話 理緒とおにゃんこさん。



「 ただいまー。」

「んなな。」


理緒が、学校から帰ると黒とグレーのしましま模様のおデブな猫が、妙な鳴き声で、理緒を迎える。

この猫の名前は、おにゃんこさん。林原家の飼い猫である。


「 んなな。んにゃ。んあん。」


おにゃんこさんは、理緒の足にまとわりついて、ご飯を催促する。



「はあ、ご飯ね。ちょっとお待ち下さいな。」


理緒は、おにゃんこさん用と書かれたプラスチックの収納ケースから、キャットフードをおにゃんこさんのお皿に出してやる。


理緒は、食事中のおにゃんこさんに、話しかける。


「 今日ね。俺、椅子からひっくり返ってさ。パンツをクラスの人の前で見えちゃって大変だったんだよ。まあ、自業自得なんだけど」


とても、家族に話せる内容ではないので、理緒はおにゃんこさんに、話してみる。


「 聞いてる? って無理か。おにゃんこさんご飯に夢中だし。猫だからしゃべってくれないか。」



理緒は、おにゃんこさんに言ってみる。


「 んにゃい。んにゃい。」

「 ドンマイって言ったの? 違うよね。きっとご飯ウマイって言ったんだよね。多分。」


( 猫相手に、何言ってんだ。俺。)


理緒は、ほぼ独り言なおにゃんこさんとの会話をやめると、制服から部屋着に着替える為に部屋に行った。


「んな〜 んなな〜」


理緒が、部屋着に着替えてると部屋の外からおにゃんこさんの鳴き声が聞こえる。


「 何なの?おにゃんこさんは。」


理緒は、部屋着にしてるTシャツとハーフパンツを着るとドアを開ける。


「んなな〜 んあん。」

「 ご飯は、もう駄目!ダイエット中でしょ。ただでさえ、六キロもあって重いのに。」

「 んなー」

「イヤーって言っても、駄目なものは、駄目! これ以上おデブになったら困るでしょ。」

理緒は、抗議するおにゃんこさんに、説教する。


「んなな んなー」

「 理緒のばかーとか理緒のケチーって聞こえるのは、気のせいかな? おにゃんこさん、キミが、そこまで、抗議するなら現実を見せやろう。」


理緒は、おにゃんこさんを抱っこして洗面所へ連れていく。


「 ふっふ。おにゃんこさん今から、キミの体重を測る。そして、自分がおデブなにゃんこだと自覚するんだ! 」


理緒は、体重計を出すと抱っこしてたおにゃんこさんを一度下ろす。


「 えーと、最初に、俺の体重を測ってと」


理緒は、体重計から降りると、おにゃんこさんを抱っこする。


「 えーと、俺の体重からおにゃんこさん分をひいて。………六キロから七キロに増えてるじゃないかーこのおデブにゃんこ。ご飯は、駄目! 今から運動するよ。」

「んな〜」

「イヤーって言っても無駄だから。これ以上太ってどうすんの? それでなくても、俺は、この家にきたその日から、ずっとおにゃんこさんに布団乗られて迷惑してんの。重いから。だから、ダイエット。」


理緒は、おにゃんこさんを運動させる為庭に面する窓からおにゃんこさんをだした。

理緒は、通学用のスニーカーに履き替えて玄関から、庭に出た。


庭の真ん中には、おにゃんこさんがお座りして待っていた。


「 おデブにゃんこを痩せさせるには、運動が一番です。」


理緒は、説明的独り言を言いながら、ある物を取り出す。


「 そこで猫じゃらしー 」


青い猫型ロボットの口調を真似しながら、おにゃんこさんの目の前に、猫じゃらしをちらつかせる。


「 ほらほら、おにゃんこさん。」


パタパタと動く猫じゃらしに、おにゃんこさんは、頭を動かしながら目で追いかける。

最初は、チョイチョイと手を出していただけが、猫本来の狩猟本能に、火がついたのか、七キロもあると思わせないボディから鋭い猫パンチが、繰り出される。


「 んな、んなな !」

「 うりゃうりゃ」


本気モードになったおにゃんこさんと理緒は、しばし我を忘れて遊ぶ。


「 おーい。理緒!」



家の前から、呼ぶ声がするので理緒が振り返ると、涼がいた。

理緒は、猫じゃらしを置いて涼の元に突進する。


「りょっ涼見てたの?」

「 うん。うりゃって言いながら、猫と遊んでよな。」

「 だって、我が家のにゃんこおデブなんだよ。ダイエットさせないと。」


理緒は、おにゃんこさんを抱っこして涼に見せた。




「 こりゃまた、うちの猫と負けないくらいおデブだな。」

「 涼の家も、猫いるの?」

「いるよ。二匹。母さんが、甘やかしてご飯やり過ぎてさ、おデブなんだよ。二匹とも。今は、ダイエット中。」

「 うちは、お父さんが、あげちゃうんだよ。

注意しても、こっそりあげるし。」

「 そっか。そのさ、理緒言いにくんだけどな。」

「んー?何?」


涼は、少し目を反らして言う。


「 Tシャツの下透けてる。」

「 あっ。はは。」


理緒は、下に着たブラの線がうっすら透けてる事にようやく気づく。制服を着替える時汗をかいて、キャミソールを脱いでいたの忘れていた。


( 涼には、恥ずかしいとこばっかり見られてるな )


理緒は、自分の迂闊さを反省した。


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