第3話 フリフリの服もスカートも嫌だ


「 これ、何ですか?香苗さん。」


リオは、香苗が、持って帰ってきた封筒をみつけて質問する。


「何って、リオちゃんの戸籍謄本の写し。」


香苗は、封筒から、戸籍謄本の写しを出してリオに、見せる。

林原理緒 女と、記載されていた。



「 俺の名前、いつの間にか、漢字になってるし。」

「いやだった?」

「 別に、嫌じゃないけど、あらかじめ、言って下さい。」


理緒が、香苗に、ツッコミを入れる。しかし、香苗は、どこ吹く風の様子で、


「 別に、困るわけじゃないから、いいじゃない。それと、もう親子なんだから香苗さんと敬語禁止ね。」

「わかったよ。でも、俺の事なんだから、あらかじめ言ってくれよ。」

「あーはいはい。ちょっと、用事、思い出したから、向こうへ行ってくるわね。」



香苗は、理緒の抗議をスルーして、鼻歌を歌いながら、リビングから出ていった。


「もう。」


香苗に、抗議をスルーされ、理緒が、むくれてると、慰めるように肩を叩かれる。


「 拓人さんじゃない。お兄ちゃん。」


顔を上げると、兄、林原拓人はやしばらたくとがいた。高校 一年生で、スラリと身長の高いイケメンである。学校では、バスケット部に所属している。


「諦めろ、理緒。いいか、母さんに何を言っても無駄だ。日本一いや、世界一を通りこして、宇宙一のマイペース女王だ。」

「うっ宇宙一のマイペース女王。」

「そうだ、香苗は、宇宙一のマイペース女王。理緒も、拓人のように諦める事が、肝心だ。私が、結婚してすぐ、諦めたように。」

「治さんじゃない、お父さん。」「父さん。」


いつの間にか、二人の会話に、父 治が、参加していた。


「諦めるねぇ。ツッコミ体質の俺には、無理かもよ。」

「そんな事を言うんじゃない。我が息子よ。」

「お父さん、一応、息子じゃなくて、娘な。一応 」

「理緒、ツッコミ入れてる割には、一応つけてるし。」


三人が、コントのような会話をしている所に、香苗が大荷物を抱えて、リビングに戻ってきた。


「 見て見て! この服可愛いでしょ。」

「母さん。なんだよ。また、フリフリの服買ってきて、まさか、理緒に着せるつもりか?」

「そうよ。理緒ちゃんの服。」


当然とばかりに、香苗は、言った。


「あのな、理緒は、ついこの前まで男だったんだろ?そんな、フリフリの服着ろって無理だよ。僕のお下がりあるし。」

「お兄ちゃんの言う通り、着ないよ。下着は、仕方ないけど、フリフリの服もスカートも、嫌だ。」


理緒は、言い放つと、リビングから出ていった。


リビングを飛び出した勢いのまま、家を出てきた理緒は、家から歩いて5分の商店街で、ブラブラしていた。


「 もう、お母さんも何も言わずに、買ってこなくても、いいのに。」


理緒は、独り言を言いながら、書店に入る。


「いらっしゃい。」


やる気のなさそうな声で、中年男性の店員が、理緒や他の客を迎えた。


理緒は、店内をまわる。あっちにいた頃は、暇があれば読書をしていた。

日本に、転生してきて数日、拓人にすすめで、漫画も読み始めたら、面白いので、すっかりはまってしまった。



「あれ、欲しかったやつだ。でも、高いから取れないな。」


理緒の身長だと、取れない位置にあるので、困っていたら、さっきの中年男性の店員が、声をかけてきた。


「おう、坊主。本が、取れないのか。どれ、おじさんが取ってやろう。ん、どれだ?」

「えーと、あの漫画です。」

「 よっしゃ、ほれ。」

「ありがとうございます。」


漫画を取ってもらって、理緒は、お礼を言った。


「坊主かあ、ちょっと複雑だなあ。」


会計を済ませて、理緒は、歩きながら、お店のショーウィンドウに写る自分の姿を見て、思わず苦笑した。

ショートカットの髪に、被ったキャスケット、拓人のお下がりである白い半袖のTシャツとハーフパンツ。これで、男の子に間違えるなって言うほうが、無理だ。


「ちょっと、何か考えたほうが良いかも。スカート穿かないって言ったけど。穿いたほうが、いいかな。せめて、女の子に、見えるようになったほうが、いいよね。」


その後、理緒は、行く先々で、男の子に間違られてへこんだ。


「絶対、俺は、女の子に見えるようになる。フリフリの服もスカートも嫌だけど、でも、男の子に間違られるのは、もっと嫌だ。」


家に帰るなり、家族の前で、そんなを言った理緒だった。

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