暇なので物語を語る

吉村 拓家

物語の始まり

この物語は魔王退治に向かった勇者の物語です。

勇者の名前はアキタリヤと呼ばれていたが、魔法が使えるということは無く、剣術にいたっては剣を振ると、剣が手を離れ前に飛ぶというのだ、ならば万人に尊敬されていると言われれば、そんなことは無かった。

勇者の素質なんぞ無かったのである。

ではこのアキタリヤはなぜ勇者として魔王退治に向かったのか話そう。

ある田舎村にムーレ村と呼ばれ、まわりが田んぼに囲まれ、田んぼの先は森しかない田舎中の田舎村があり、そんな田舎村でアキタリヤは生を受けた。

子供の頃のアキタリヤは外で走り回ったりということはせず、家で絵を描くことばかりしていた。

そんなことしかせず近所では、将来は画家でもなるのか、外で遊ばず家で遊ぶとは近頃の子供は変わってるね、などと言われていたが、気にもせず、親に何かと言われたりしたが、気にもせず、家にいた。

歳が10になる頃には近場の学び所へ親に無理やり行かされた。

それが嫌々で親に、田んぼに囲まれた田舎に生まれたからには米の作り方のみ知ってればいいではないかと抗議をしたところ、親は米を売るための学が必要ではないかと言われ、あるときは仮病を使ったが、すぐにバレて引きずられてでも学び所へ無理やり行かされた。

このようなことが毎日あったのだが、月日が立つにつれてアキタリヤは素直に学び所へ行くようになり、ついには学び所はこの世で最高の場所であるなと言うようになったのだ。

これには親も学び所に無理やりにでも行かせて良かったと喜んだ、が、やはりそこはアキタリヤであった。

この頃学び所に新しく赴任してきた先生が、なんとも可愛く、アキタリヤは毎日その先生目当てで、先生に気に入られたいがため学び所へ通うことにしたのだそうな、しかもアキタリヤは先生を永遠と見つめて、先生が話した内容を暗記するまでに成長した。

これには、やはりと言うべきか、その話を聞いた親はひどく困惑したのだった。

さて、この先生をアキタリヤは毎日毎日見つめる日が続き、ついにはアキタリヤは先生の肖像画を現物を見ずに完成させるという成果を出し、自作した木彫りの額に入れて、部屋に飾るまでになったのだ。

が、しかしアキタリヤに悲劇が起こる。

あの先生が結婚するということと、相手と城の城下町で部屋を借り、二人で住むことだった。

結婚するとしたらアキタリヤにとって、悲しくもあり喜ばしいことでもあるのだが、もうひとつの、先生が遠く遠く離れた城の城下町に行ってしまうことだ。

それは二度と会えないという事だった。

これを聞いたアキタリヤはその日死んだように顔が白く、うつむき歩き、歳が100ほど立ってしまったかのような変わり果ててしまっていたと、まわりの子供どもが証言している。

そんなアキタリヤに嬉しいことが起こるのだ。

なんと、先生と二人で話す場がもうけられたのだ。

なんでも、アキタリヤが明日にでも、いや、今日にでも、首を括る、薬を大量接種、山から飛び降り、などなどしてしまうのではないこと、まわりの子供どもが先生へ伝えたことによって、急遽この対談が実現したのだった。

この後の物語はまた今度ノシ

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