1幕 1章 4話 これからがキツイ時間。



昼休みが終わって3限、4限と何事もなく終わった。

だけど、本当にキツイのはこれからだ。

5限目。ゼミの時間だ。

私の1番嫌いな時間だ。



「‥‥じゃあ私はこっちだから。」



ちゃんりなは橋本ゼミの教室に行く。

ここからはちゃんりな抜きの時間だ。



「ちゃんりなぁー‥また明日ね‥」



くうこが悲しそうにちゃんりなに手を振る。



「うん、じゃあね〜‥またー」



ちゃんりなは少し寂しそうに橋本ゼミのある教室へと向かっていった。

‥‥こっから地獄だ。

私達3人は大野ゼミのある教室へ向かう。



ゼミ塔3階。

1番端の教室。

私達の所属している大野ゼミの教室だ。

‥‥

扉を開けると、同じく大野ゼミに所属している男子がちらほら座っている。

私達が教室に入ってきても、無関心。気にしない様子だ。

挨拶をするわけでもなく、ただただ、男の子達だけでお喋りを続けている。

私達も別に気にすることもなく席に座る。

いつも通りの席順。

くうこの隣にりょーかが座り、私がりょーかの後ろの席に座る。

これがいつものゼミの席だ。

くうことりょーかが話してる後ろで私は携帯を取り出し、明日ちゃんりなと行くミスドの新商品を調べていた。

‥‥やっぱり美味しそう。

新商品の概要を見て行きたい気持ちが大きくなった。

明日をたのしみに5限に挑む。



そんなことをしているうちに先生がくる。

私達のゼミの先生、大野先生だ。

私たちと同じくらいの子供を持つ男の先生だ。

これといった特徴のない普通の先生だ。

ただ厳しくもあり、優しくもある先生であり、何を考えているのかわかりづらい先生だ。

はっきり言えば苦手な先生だ。




「えー‥おはようございます。ちょっと遅れてすみません。今日はマネジメントの〜‥」



‥‥確かに開始時間より10分くらい遅く来ている。

まあ10分くらい誤差の範囲だろう。

先生の話を聞いていると、今日はフリーマーケットや中古ショップのマネジメントを調べる‥

という内容だった。

私達のゼミはマネジメントやビジネス産業について学ぶゼミである。

のちに就活に繋がるのかというとすべてがそうではないだろうが、将来に役に立つことを多く学べるのでゼミのコンセプトとしては悪くない‥‥はず。






「あー‥‥めんど‥」



くうこが先生に聞こえないくらいの小声で呟いた。

複数人で協力して行っても良いということだったので、くうことりょーかと一緒にフリマについて調べている。

くうこがそうぼやくのもわかる。

結構面倒‥‥というかつまらない‥

興味がある人は楽しいのだろうが、私はちっとも興味が湧かない。

それは他の2人もそうみたいで、2人ともダラダラと調べている。



「2人ともなんかいい感じの記事あったー?」



くうこがりょーかのパソコンを覗きながら聞いた。

りょーかはため息をつきながら、



「別に‥ない」



と答えた。

だが、りょーかのパソコンを覗いていたくうこは



「でもこの記事よくない?りょーかちゃんと調べてるじゃん!」



「こんなのでいいのかな?」



「結構良くない?」



2人で話を始めてしまった。

‥‥

‥‥‥私は最初からお呼びでないか。

話してる2人をチラッと覗いた後、私は自分が調べてることをまとめる作業をした。



「あみは何かあった?」



数分後にくうこが思い出したかのように私に話しかける。

平静を整えろ‥いつも通り‥大丈夫‥



「うーん。こんな感じ?」



まとめていた資料を彼女に見せた。

うーん。と悩むくうこ。

そしてマウスを転がしながらまとめた資料を凝視した結果。



「なんか微妙。」



そのままパソコンを突き返した。



「‥‥」



出てきた言葉はこれだ。

‥‥なんなんだ。

今まで私のことなんか気にも止めなかったのに。

いざ、見せたらこれか。

この態度か。



怒りが沸々湧いてきた。

求めてるものを用意できなかった私も悪い。

だが、態度やら言動やらがムカつく。

腹が立つ。







「‥‥あみ、私にも見せて。」



りょーかが私のパソコンを覗いた。

りょーかもくうこと同じようにマウスを転がしながら、まとめた資料を見る。



「‥ねえくうこ。あみの資料のここの部分良さげだよ?」



りょーかが指差しながらくうこに伝える。



「?ほんと?」



「うん。私の調べてるところと内容近いし、掛け合わせたら良いと思う。」



「そっかー。なるほどー!」



くうこはりょーかの意見に同意して、私の資料をもう一度見返した。



「あみ、上出来だよ。良いと思う。」



りょーかが笑顔で言った。



ああ‥‥

りょーかは私の怒りを察したのだろう。

少しでも空気が悪くなるのを避けたのだ。

‥‥りょーかに気を利かせてしまった。

確かにここで私とくうこが言い争ったら、りょーかが可哀想だ。

私は湧き上がっていた怒りを沈めた。

‥‥あとでりょーかにお礼言わなきゃ。









18時10分。

ようやくゼミが終わった。

私も、くうこもりょーかもみんな疲れた顔をしてる。

無理もない。

興味のないことをやらされて、疲れないわけがない。

3人とも無言で帰りのバスを待っていた。



「‥‥ちゃんりなに会いたい」



くうこがボソッと呟いた。

きっとちゃんりなにゼミの愚痴を聞いて欲しいんだろう。

あの子なら、「大変だったね〜」とか「お疲れ様」とか優しい言葉をかけてくれるから。

だけど、あの子はゼミが違う。

先に帰ったか、まだ学校に残っているのか知らないが、今日はもう会えないだろう。



「うん、そうだね‥」



疲れと面倒くささでくうこにはそれしか返せない。

りょーかは終始無言だった。



そうして、帰りのバスが来た。

3人なのでどうしても2:1に別れてしまう。

くうこはりょーかの手を引っ張ってしまったので必然的に私は1人で座る。

まあ‥いいんだけどね。

こうして私達の乗せたバスは最寄駅に向かって走り出した。

















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