1幕 1章 2話 アタリとハズレ。


今日は1限から全員一緒だ。

全員が同じ授業を受けることはほとんどない。

授業を選択するときに、みんなと相談なんてしないから、基本的に授業はバラバラだ。

‥‥バラバラのはずだ。



適当な場所に座ると、ぞろぞろとみんなも横に並ぶように座り始めた。

広い教室だと、4人は大体1列に並ぶ。

決まりではないけど、なんとなく1列に並ぶ。

そして、それぞれ各々のことをする。

携帯いじる子もいれば、次の授業の資料をパラパラ見たり、話したり。




「ねえねえ〜あみ〜!」



隣に座っていたちゃんりなに話しかけられた。



「んー?なにー?」



「みてみて!ミスドの新作〜!」



携帯をいじっていたちゃんりなはミスドの新作の写真を見つけたらしく、私に携帯画面を見せた。

見ると、中に抹茶のクリームとわらび餅が入っている新作のドーナツだった。

食べ物に目のない私は‥‥テンションが上がった。



「え!めっちゃ美味しそう!!!なにこれ!」



「明日から発売だって!!!抹茶だよ!!あみ食べに行こう〜!!!」



ちゃんりなは新作の商品を見つけたら飛びつく子だ。

美味しそう〜可愛い〜って見つけては私を誘ってくれる。

ちゃんりなのちょっとした誘いはすごく嬉しい。

だからこの誘いも、



「行くー!どうする?明日行く?」



即OKだ。



「明日行こう!早く食べたい!!!講義終わったらすぐ行こう!」



「いいよー!」



明日のたのしみができた。

ちゃんりなと話している時、くうことりょーかが喋っていることに気づいた。

相変わらずベタベタしてるなと思ったが、特に気にすることもなかった。

ちゃんりなは本当に美味しそう〜と携帯を眺めている。

私も携帯を取り出し、明日はちゃんりなとミスド、と予定に書き込んだ。












「あ!先生〜!!!」



ちゃんりなが手を振ったその先には女の先生。

ちゃんりなの、ゼミの先生、橋本先生だ。



「おはよう。みんな今日も休まず来たねー。」



橋本先生は優しくて温厚な先生。

物作りや、ゲームやプログラミングを教えてくれる先生で、話が面白い。

この先生の講義は私にとっては、気がラクな講義、アタリ講義だ。

なので、私はよく橋本先生の講義を受けている。



「莉奈は今日もゼミに参加するの?」



「うん!作業進めたいし!」



ちゃんりなの所属している橋本ゼミも、プログラミングやゲームに関することが多い。

ちゃんりなもよくプログラミングをカタカタ打っているのを見かける。

プログラミング以外にも、ゲームモデルを作っていたり、背景を描いていたり‥。

ちゃんりなは、今はなんの作業をしているのだろう‥‥?




「そっか。あみは?」



橋本先生が私にも話を振った。

私も一応、橋本ゼミに所属している。

とはいっても、片足しか突っ込んでないので橋本ゼミ所属と胸を張って言えるわけではない。

ちょっと見学したり、簡単な作業を教えてもらったり‥‥。

普通はゼミ所属分の単位が貰えるのだが、片足しか突っ込んでいない私は単位を貰っていない。

ここで橋本先生に、もちろん参加します!と言いたいところだが、今日はそう言えない。



「今日は‥向こうのゼミがあるので‥」



「あー。今日は大野ゼミの日か。」






大野ゼミ。私が正式に所属しているゼミだ。

正確に言うと私、達、が所属している。

私以外にも、くうことりょーかも大野ゼミ所属だ。

スポーツやマネジメントについて学ぶゼミ、橋本ゼミとは分野が全然違うゼミだ。




「そうなんです、今日は大野ゼミに参加なので‥」



「いいよいいよ!あっちのゼミも大事だからね!」



橋本先生は本当にいい先生だ。

ゼミの掛け持ちもあっさり承諾してくれて、対応も良くて、いい先生だ。



「先生今日は講義なにするの?」



「今日は、ちょっとプログラミングをやってみようと思ってるよ!」



「うわー。結構複雑なやつでしょ?無理だわ。」



くうこがプログラミングと聴いてすぐに諦めモードに入った。



「そんなことないよー。簡単なプログラミングだからすぐできる!頑張って。」



「はーい。頑張ります。はあ‥」



くうこは少しダルそうな返事をして、ため息をついた。

これ、大丈夫か?

機嫌悪くなりそうで怖いんだけど‥。



「大丈夫よ〜くうこ!わかんなかったら私が教えてあげるから、一緒に頑張ろ〜!」



ちゃんりなが明るくくうこを応援した。



「ちゃんりなぁ〜、よろしくね!頑張る!」



「お〜!!!」




またしても、ちゃんりなに助けられた。

くうこの機嫌が悪くなることなく2限に突入した。

席に着き、持っている自分のパソコンを開く。

すると、隣に座っていたくうこがぼやいた。



「やっぱりプログラミング心配だわー‥。テストに出たら終わるわ。」



‥‥まずい。



「‥‥でも、ちゃんりな教えてくれるって言ってるし、大丈夫だよ。」



「‥‥わかってるんだけど‥覚えられる自信ないわ‥‥」



「‥くうこなら大丈夫だよ。先生も簡単って言ってたし。」



「‥‥はあーちゃんりなにめっちゃ聞きまくろうっと。」






不安と愚痴をこぼしながらくうこもパソコンを開いた。

くうこも橋本先生の講義は必ず取る。

先生の人柄もよく、単位も取りやすいのが理由。

だが、根本の講義内容はくうこには向いていない。

なので講義始まりは大体ポロっと弱音を吐く。

つまり、くうこにとってはハズレ講義だ。

‥これはちゃんりな先生大変だぞー。


こうして始まったプログラミングの講義は、案の定の結果で終わった。





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