第3話 こだわりは毒
「先生! 前回の続きです!」
「続きかー」
「なんで先生そんなやる気でないんですか! しょぼくれてんですか! ハキハキしてくださいよ!」
「今回のは俺にもダメージがあるから……。つらい、本当につらい……」
「いいから指摘してくださいよ! カモン! カモン!」
「じゃあ言うがなあ……」
「はい! どうぞ!」
「…………剣戟ってあんま人気でないよな」
「――――――――――んがああああおあああおわああああああああ!!」
「というか最近、バトルものってあんまりなあ……。昔に人気だったのも、バトルはメインじゃなかったし……」
「ぐひっ! ぐひっ! ぐひっ!」
「人気を博すものって、どんなバトルがあるかじゃなくて、誰が、どういうやつがバトルして、そこになにを願っていたか、だからなあ。映画とか見たことある? ボクシング映画、古いけど」
「ろっひー……。ろっひー……。おねがい、たしゅけへろっひー」
「人物描写、徹底的にどういう境遇なのか、想い人の有無やなんやを描いてて、最後に昇華するために戦闘があるんだな。バトル、戦闘、アクションってのはそういう手段であってメインなんじゃないんだ」
「そういう、そういう、そういう…………! そういうことをぉぉぉぉ…………! いわ、言わないでくださいよぉぉぉぉ!」
「そういうところだぞ、ここ」
「でぇぇぇぇぇぇもぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「それでは今回の言葉だが、助手よ! いいか、よく聞け!」
「聞きますぅ……」
「誰もお前のこだわりなんか理解してくれないんだ!」
「ああああああああああ! うあああああああ!」
「そうだ! 泣け! むせび泣け!」
「ひっぐひっぐ! えっぐえっぐ!」
「どんどん泣け! 泣いて泣いて、悔しがれ! だが、事実だ!」
「そんな事実、聞きたくなかった! 聞きたくなかったですよ先生~~!」
「早いうちから知っておくべき重大事実だ! いいか、お前がこだわりにこだわり抜いたところで、執着したところで、そんなものは評価されないんだ!」
「じゃあ、どうやったら読者に私の作品を評価してもらえるんですか~~」
「読者が評価したいことなら評価してくれる!!」
「どんなんですか~~」
「端的に言えばジャンル。現代学園、異世界ファンタジー、恋愛、読者が求めていることだ!」
「げ、迎合せえっていうんですか~~」
「迎合、端的に言えばそのとおりだ。だがな、俺だってそうだ。俺だって、グロいのは嫌だ!!」
「……い、嫌なんっすか!?」
「グロいの、やたらと陰鬱なもの、そういうのは嫌いだ! 読みたくない! もちろん書くのも嫌だ! たとえ、どんなにおもしろい、上手、新鮮だと評判であろうと、嫌なものは嫌だ!」
「こ、こだわってるんですよ!? 度肝を抜かれるんですよ!? それでもですか!?」
「それでもだ!!」
「作者は、すごく研究して、おもしろくしてってこだわってても、どうにもならないんですか!?」
「カレーが嫌いなやつはどんなに美味いカレーでも食わないんだよ!!」
「……じゃあ、ダメなんですか。私のやったことは、頑張ったことは、全部が全部、無駄だったんですか、先生!」
「いいや、こだわりとは――ここぞというところで使うのだ!!」
「ここぞというところ!?」
「あまったるい砂糖の山に唐辛子を仕込むように、物語に緩急をつけるために、こだわりをぶち込む! その逆もありだ! 陰謀渦巻くドロドロの政治ものに、純愛のロマンスを挿入すれば互いが互いを引き立て合う!」
「一辺倒にしないためのもの、ですか」
「ああ、こだわりは毒だが、使いようによっては薬になる。バランスよく配置するのだ。そして、これもしっかり頭に入れておけ」
「……な、なんでしょうか」
「読者に期待をするんじゃあない!!」
「期待をするな、とは、なんですか!? どういう意味ですか!?」
「これはよく陥ることだが、思ったことはないか?」
「ど、どんな……?」
「――きっとこの表現を理解してくれる!!」
「うぐっ!」
「――この意図を掴んでくれる!!」
「はうぅ!」
「このようなことを考えるな! いいか、絶対に、読者は作家の思うとおりに動いちゃあくれないのだ!」
「み、身に覚えがある……。つらい……」
「剣戟で例えると、真剣勝負なのだ!! 作者と読者は、殺し合っている!!」
「殺せと、いうことですか!?」
「死んでくださいじゃなく、殺す! その心構えでやるのだ! そもそも、そういうものだろうが!」
「だろうがって言われても……」
「俺たち作家はなあ、つまらないって言われたら死ぬんだよ!!」
「……そのとおりです。そのとおりです、先生! ありがとうございました!」
「次は、新人賞の選び方でもするかな……」
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