第16話 ファイナリストとサマースクール
――煌華学園 第1アリーナ――
『試合終了!
勝者、《銀氷の剣士》こと坂宮涼也選手!
やはり《
《
あの事件は今でもお茶の間の話題となっている。連日テレビ番組で特集されればそりゃ話題にもなるよな。
俺はあの襲撃で
加えて、ヒースネスの警察機関にも事情聴取を受けた。大した情報は無かったから役に立てたのかは分からないが、一応知りうる情報は全部話したつもりだ。
そして……《
俺はちゃんと試合で勝って代表になりたい。その意思をはっきり伝えると、運営委員会の担当者は了承してくれた。
そしていよいよ次は―――
『さて、これにて全ての準決勝が終了いたしました!
そしていよいよ次回からは決勝戦! ここでファイナリストとなった選手たちの紹介をします!』
モニターに各ブロックのファイナリストの顔写真が映しだされる。こうして顔写真が堂々と映るのは少し恥ずかしいな。
『まずは第1ブロックの紹介です!
第1ブロックファイナリストは―――
校内ランキング1位、《
校内ランキング5位、《
上位戦か……スナイパーと言うからには、卯月さんは遠距離系の武器の使い手だろう。これは見るのが楽しみだ。
『続きまして第2ブロックの紹介です!
第2ブロックのファイナリストは―――
校内ランキング15位、城崎 百合選手と
校内ランキング13位、
彼女が決勝まで来れた理由は、ブロックに恵まれたということが影響しているのかもしれない。
実はユリの所属する第2ブロックには、校内ランク10位以内の生徒が1人もいない。ほとんどの10位以内の選手は意図的に第1ブロック、つまりアッシュさんのブロックに集められている。
先生方の話によると、アッシュさんを無双させて代表に認定するのはあまり良くないらしい。試合のエンターテインメント性に欠ける、とかなんとかだったかな?
『そして第3ブロックのファイナリストは―――
校内ランキング11位、アラム・カシヤノフ選手と
校内ランキング2位、《
アラムには申し訳ないが、この試合は負ける気がするな……。相手は2位、彼がアッシュさんに次ぐ実力者にまだ勝てる見込みはない。剣の腕はいいのだが……能力の制御にまだ若干の問題がある……。
まぁ、それでも応援はしておこう。友人だしな。
『最後に第4ブロックです!
このブロックのファイナリストは―――
校内ランキング8位、《銀氷の剣士》こと坂宮 涼也選手と
校内ランキング6位、《氷獄の使者》ことヒューム・スクウィール選手だ!』
会場が一瞬ざわついた。それもそうだ、この組だけ同じ《自然干渉系》能力を持つ者同士の戦いになるのだから。
でも能力の制御や剣の腕は、俺の方が優れているんだってことを証明してやる!
『以上各ブロックのファイナリスト紹介でした!
決勝戦は明後日から2日連続で2試合ずつ行います!
それでは皆さま、ごきげんよう!』
――煌華学園 武術科棟――
「すげーな! このクラスからファイナリストが3人も出てるなんて!」
「くそぉー! 俺ももっと早くから坂宮と仲良くしておくんだった!」「アンタじゃ無理無理。」
「坂宮くんってすごいわよね? 技術を教えただけであんなに周りを強くしちゃうんだから。」
1年武術A組は明後日の決勝戦の話で持ち切りだった。何せこのクラスに俺、ユリ、アラムの3人のファイナリストがいるのだ。そりゃ話題にもなるよな。
……そう言えば―――
「なんで俺達、教室にいるんだ? 試合期間中は各自で寮に戻るなり訓練するはずだよな?」
ユリに訊くと、彼女も首を傾げた。
「なんか、久々のホームルームをやるとか言ってたような……? 私にも分からない。」
「いや、絶対それだよな?」
久々のホームルームか。でもファイナリスト紹介があったその日になんて……一体何を話すんだろう。俺たちへの激励か? それとも別の話か?
「あ、そうそうリョーヤ聞いて!
私、遂に真技を使えるようになったんだよ!」
「へー、よかったな―――ぁぁって、真技!?」
「う、うん、真技。」
大声を出したせいでユリが若干引いてしまった。が、大声を出すくらい驚いたのだ。
「いや、確かにあの襲撃の後にかなりハードな練習をしていたのは見てたけどよ。
真技を編み出すまでに至れるとは………あ、」
いや、よくよく考えればその可能性は十二分にあった。
対ウィルター選手戦で見せた連携と、対武蔵・デルバード戦で見せたファーブニルの圧倒的な力。特にファーブニルはあれだけでも真技に匹敵する技になりうる。
「ね? 可能性はちゃんとあったでしょ?」
「お、おう。そうだな。なら決勝戦、期待してるからな!」
「うん、期待してて!」
「はーい、皆さん席についてくださーい。」
担任、船付 柿音先生が教室に入って来た。そもそも会う機会がほとんど無かったとはいえ、久しぶりに見たな。
生徒達はそれぞれ自分の席に戻って行き、全員が着席したのを確認すると、船付先生は話を始めた。
「みなさんお久しぶりです。最初の校内ランキング発表以降、ほとんど会ってない生徒もいらっしゃるかと思います。
元気にしてましたか?」
……ここで「はーい」とか言ったらどうなるんだろう。普通に「はい、いいお返事ですね」とか返してくるのだろうか?
なんて思っていたが、船付先生は返事を待つ様子もなく話を続けた。
「まずは城崎さん、坂宮さん、カシヤノフさん。決勝進出おめでとうございます。
私も今まで1年生のクラスを何度か持ちましたが、ファイナリストが3人も出たことは1度もありませんでした。優勝、期待してますよ?」
「は、はい! 頑張ります!」
すごいプレッシャーを感じるな……。横を見ると、ユリはさほど緊張していないように見える。大勢に話しかけられるのは緊張するくせに、こういう場面では緊張しないんだな。
「さて、ところでみなさん。《
するとすぐにユリが「はい」と手を挙げた。そういえばユリは入学式で新入生代表を務めていたな。てことは当然、予選の後に何があるのか知ってるのか?
「日本かオーストラリアのどちらかを選択し、そこへ5泊6日のサマースクールとして訪れる、という行事があります。」
「はい、その通りですね。」
あ、そう言えば入学説明会でもらったパンフレットにそんなこと書いてあったな。道場の稽古で疲れてて眠かったから、まともに読んでなかったけど……。
「出発まであと1ヶ月ほどなので、そろそろ行き先のアンケートを取ろうと思ってます。
サマースクールの大まかな流れを生徒手帳に送信しておきましたので後で確認をしておいてください。
1年に1回だけのチャンスなので、皆さんよく考えてくださいね?」
「いつまでに決めればいいですか?」
明後日から決勝戦が始まるんだ。出来れば集中したいところだ。さすがに明日とか明後日までとかそういうことは、多分ないだろうけど……。
「今が6月の―――うん、そうですね。来週の月曜日に希望する行き先のアンケートを取ります。
それでは解散です。みなさんしっかり休んでくださいね?」
今日は水曜日ってことは……5日後か。それなら決勝も終わっているから大丈夫だな。
……そう言えば、7月って何かあった気がするけど……気のせいかな?
「おーい、リョーヤ!
今週スペシャルメニューの日だぞー? 一緒に食堂に来ないのかー?」
「お、まじか! 行くに決まってるだろ!」
既に廊下に出ていたアラムに呼ばれて、俺は教室を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます