第12話 火球と違和感
――煌華学園 グラウンド――
「さぁて、御手並み拝見だ。」
デルバードがメイスを振ると、周囲に浮かんでいた火球が一斉に襲いかかってきた。
即座に氷の結界を張り襲ってくる火球を防いだが、いつまで経っても結界に当たり続けている。一体いくつあるんだ!?
「ほらほら、ちゃんと守らないと肉片になっちまうで?」
「誰がなるかよ!」
ミステインを地面に突き立て、デルバードの足元から氷の柱を生成する。デルバードはバランスを一瞬崩し、それに連動するように火球の襲撃も止まった。
「ここだ!」
氷翼を背中に生やし飛び上がると、氷塊をデルバードの頭上に生成した。
「おお! そりゃデカイな!」
「褒めてくれてどうも! 潰れろ!」
生成した巨大な氷塊を落下させ、氷の柱もろともデルバードを押し潰した。氷塊の重みで落下点を中心にグラウンドに深い放射状のヒビが入った。先生方、この補償はさすがに勘弁してくだいよ?
「やるやん。ワイに攻撃当てるなんて、かなりいい線してるで?」
氷の中から声がしたかと思うと、氷塊が内側から爆砕された。氷塊の真下でプレスされていたはずのデルバードは、まるで何事も無かったかのように仁王立ちしている。
「まぁ、あんだけでかけりゃ当たるけどなぁ?」
「それじゃ、これは避けられるとでも?」
そう言って今度はデルバードの周囲に落ちている砕けた氷を、竜巻のように舞い上がらせた。あの中にいればミンチになるのは免れないだろう。
「この技は結構疲れるから、できればあまり使いたくなかったんだよな……。
でも、お前はこれを使わないと倒せない気がするから、悪いけど使わせてもらったぜ?」
「いや、使ってもワイは倒れんよ?」
「!?」
デルバードがいるはずの辺りから赤い光が漏れ出してきてる。いや、ただの光じゃない……これは―――
「炎か!」
竜巻は次第に炎の赤に染まっていき、さらには熱を放ち始めた。離れないとマズイ!
「クソッ!」
竜巻に背を向けて距離を取ろうとしたが、すぐ背後で何かが爆発した。
「なに―――っ!?」
衝撃で体勢を崩し、氷翼も片方が衝撃で半分ほどなくなってしまった。
制御を失い、グラウンドに落下しながら上空に視線を向けると、大量の火球が待機しているのが目に入った。
いつの間に仕掛けられていたんだ!? あの量は絶対に危険なやつだ!
地面に激突する直前になんとか氷翼を修復し、勢いを殺して着地する。
ほっとするのもつかの間、休む間もなくデルバードが次の攻撃を仕掛けてきた。
「ほな、いくで?
名付けて、煌華の生徒ミディアムレアステーキの作り方や!
まずは爆風で新鮮な肉を叩きまーす。」
デルバードがそう言うと、上空で待機していた火球が俺めがけて一直線に飛んできた。
氷の結界を張って耐え凌ぐつもりだったが、最初よりも明らかに威力が高くなっている。叩かれると言うより、どちらかと言うと潰されそうだ。
「お、重すぎる……!」
「続いては、灼熱のトルネードファイヤーでこんがりと表面を焼き上げまーす。」
火球が止んだと思うと、今度は乗っ取られた竜巻が結界を包み込んだ。
なんて熱量だ! アラムの業火と同じくらいかそれ以上だぞ!?
あまりにも大きい熱量の影響で、氷の結界も徐々に溶けだしてきている。
「最後はー―――」
竜巻が収まると、結界を突き破ってデルバードが強引に入り込んできた。
「―――焼き加減を叩いて確認します。」
デルバードは両手で構えたメイスを勢いよく振ってきた。どうにかミステインで直撃は防いげたが、衝撃でかなり後方に吹き飛んでしまった。
「叩いて確認とかおかし―――」
「それでは手元に引き寄せてから、いただきます。」
またしてもすぐ背後で起きた爆発の衝撃で、デルバードの元に飛ばされた。そろそろ反撃をしないと本気で殺される……!
「あいにく、まだ焼けてねーよ!」
俺は剣先をデルバードに向け、勢いを逆に利用して接近する。対するデルバードは両手を広げて余裕の表情だ。
「このまま―――」
「……お前さん、避けたようがいいで?」
「は?」
その言葉の直後、デルバードの目の前に雷が落ちてきた。とっさに両足でブレーキをかけて横に避けると、さっきまで俺がいた場所に巨大な雷が轟音とともに落ちた。
「雷!? 新手か!」
目の前に落ちた雷の中から、デルバードと同じ黒装束の男が立ち上がった。その手には日本刀が握られている。
「む……。その風貌、煌華学園1年武術A組の坂宮涼也とお見受けいたす。」
「……なんで知ってるのか、なんて質問は野暮だな。あんだけ試合が中継されりゃ顔もバレるか。
お前は何者だ。」
「拙者は《
「その名前……日本人か。」
テロリストに日本人が混じっているなんて……。平和国家が聞いて呆れるな……。
「武蔵、何か用か?」
「なに、派手に何かやっているのを見たので参上した次第。」
そう言うと武蔵は少し屈めて居合の構えをとった。ムダがない……察するにかなりの剣豪なのだろう。
「……いざ。」
すると、ピタリと全ての動きを止めた。瞬き一つしないその姿は鬼気迫るものがある。俺は緊張で全身の毛が立つのを感じた。
そして―――
「―――っ!」
「
武蔵の発した言葉の直後、俺の頭上から雷が落ちてきた。
たまたま声と同時に張った結界で間一髪防いだけど、もう1発あれを落とされたら防ぎきれる自信はないぞ……。
「ほう、初手を防ぐとは。なかなかに運がいい。」
「どうやら俺は運だけは良いらしいからな。」
「そうか。なら次はどうであろうか?
……
一瞬武蔵の目の前の空間が断ち切られたと思えば、今度は右から電撃が高速でなぎ払いに来た。
「マジか!」
なんとか氷翼で舞い上がってかわしたのだが、何か違和感を感じた。けどなんだろう……分からない。
……いや、とりあえず疑念は後回しだ。俺は空中に留まりながら、周囲に大量の氷の槍を生成し始める。
「あんたと戦うと嫌な予感がしてくるから、一気に終わらせるぞ!」
カレンさんとの試合で使った量よりもさらに大量の槍を生成し、武蔵めがけて一斉掃射した。がここでまたしても違和感を感じさせることが起きた。
「
という声とともにを今度は電撃が、なぎ払うのではなく槍を破壊しながらまっすぐ飛んできた。
とっさに横に避けるが、運悪く翼を何かの衝撃波で吹き飛ばされ地面に落下した。幸い今回は高度も高くなかったためにどこも怪我をしていない。
「さすがにKOは無理だったか……。
にしても、やっぱり何かがおかしい。」
断ち切られたように見えた空間、轟音を伴っているわけでもないのに発生した衝撃波、そして全く動かない武蔵……。
「風斬」
もう一度なぎ払い型の電撃が来た。俺は氷の障壁でそれを防ぐと、ミステインを構えて一気に詰め寄る。この違和感の正体を確かめなければ!
「もらった!」
が、俺の斬り上げた剣は武蔵の目の前にある空間に弾かれた。なるほど、そう言うことか!
反撃を警戒して素早く後ろに下がり、再びミステインを構えた。
「お前、
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