第4話 不安と開会式
――煌華学園 学生寮――
トーナメント発表から数日、遂に試合は3日後に迫っていた。俺はユリとアラム、そしてリンシンを交えて、部屋で初戦の対策を考えていた。
「最初にあるのは初日のリンシンの試合か。
相手は―――」
「……70位の2年生、ヴィクトリア・スミス。」
情報を見る限りでは、地面を操る能力を持つ剣士だ。得意なのは床を盛り上げて自らを防御する単純な技。勝機は十分にある。
「リンシンのスピードがあれば相手を翻弄させることが可能なはずだ。頑張れよ!」
「……うん。」
「その次は私ね。
相手は1年生で20位のイザベル・ハルフォード。氷使いだって。」
相手が氷なら――いくらほぼ同ランクだからといっても――俺と散々練習してきたユリが負けるはずない。ここはまずなんとかなりそうだ。
「そして2日目は僕だね。
お相手は炎使い、久留米ミクさんっていう斧使いか。」
「ランクはどうなんだ?」
「80位。まだ1年生さ。」
ならアラムも問題なさそうだ。
そうなると一番の悩みの種は―――
「リョーヤの初戦、2年生で8位のカレン・ユーグリスさん……。」
「……難敵。」
「どうするんだいリョーヤ? ちなみに、能力は光を操れる能力だそうだよ。」
「みたいだな。それに訊いた話によると、どうやら真技が使えるらしい……。」
ユリが生徒手帳に表示させた校内ランキングを見てため息をついた。
「能力に関する情報は……ほとんどなし。
この人、あまり決闘試合をしない人らしくて情報が少ないみたい。」
するとアラムが携帯でインターネットの煌華学園情報サイトを見せてきた。ページにかかれているのは、カレンさんについての情報だ。
「このサイトによると、『試合をしても技を出す間もなく、剣技だけで相手はやられてしまうために、能力を伴った技を見たことない人が多い』だってよ。
使う武器はエストック。先端に力が集中するだろうから、氷の強度をかなり上げないと簡単に砕かれることになりそうだね。」
「つまり細かい戦法は本番にならないと立てようがない、か。」
となれば俺は、ひたすら特訓するのみだ。道場の師匠に教わった剣技もようやく体に馴染んできたしな。
「よし、残り少ない日数だけど、気合入れてやってくぞ!」
「「「おう!」」」
――煌華学園 第1アリーナ――
そして3日後、ついにその日を迎えた。
『さーて! 待ち望んだこの日がやって来ました!
《
実況は放送クラブに所属する、わたくし2年技術C組のニーナ・アルテット。解説は2年技術C組のウィル・ステイザーでお送りします!』
『あっども、よろしくっす。』
なんかやる気のない解説だな……大丈夫なのか?
アナウンスを聞きながら思わず心配になってしまった。ま、大丈夫だろう、多分。
『またこの試合は日本を含めたアジア一帯で生放送されますので、テレビの前の皆様もどうぞ楽しんでください!』
観客席から割れんばかりの歓声が上がった。
俺達はリンシンの激励で控え室にいるのだが、ここまで聞こえてくるとは……どんだけここの生徒は声を張り上げてるんだか。微笑が口角に浮かんでしまった。
『それでは学園長の柳洞寺 大悟先生より、開会の言葉をいただきたいとおもいます。』
アリーナの中央に設置されたマイクへと見た目50代の男性が歩いていく姿が設置されたモニターに映しだされた。
『煌華学園学園長の柳洞寺大悟だ。
まずは1年生諸君、遅くなったが入学おめでとう。煌華学園生活を楽しんでくれたまえ。
そして上級生諸君、1年生が相手になっても気を抜くな。全力でぶつかっていくように。
生徒達はすでに知っている通り、この予選は校内ランキングにも影響がある。
負けてもランキングが大幅に下がることはないが、自分より上位の選手に勝てば、相手より1つ上のランキングになれる。格上であればあるほど勝った時の報酬も大きいということだ。
生徒諸君、予選突破ひいては《
再びアリーナが震えるほどの大歓声が上がった。たくさんの人が見ていても、緊張せずに気を引き締めていかないと!
けどまずは―――
「リンシン頑張れ! 応援してるからな!」
「……うん、頑張る。」
リンシンはウォーミングアップ用に解放されている第2アリーナへと向かって行った。そのまま試合に行くだろうから試合終了まで会えないはずだ。
「よし、俺達は観客席で観戦しよう!」
観客席に着くと、既に第1ブロックの初戦が始まっていた。2戦後がリンシンの出る第2ブロック第1試合だ。
『さすが校内ランク24位の如月研二選手! 見事な剣さばきでヴィタリー・フェルツマン選手をフィールド端に追い詰めていく!』
『これはもう勝負がみえてきましたねぇ。』
如月選手の剣がヴィタリー選手のレイピアを弾いた。武器を奪われたヴィタリー選手は両手を上げ降参してしまった。その様子を見た主審が赤い旗を上げた。
『試合終了!
勝者、如月研二選手! 格上の技量を見せつけ、初戦突破第1号に輝いた!』
最後しか見ていないが、アリーナの床に目立った傷がないことから、如月選手は能力を使っていなかったように見える。剣の技量だけで圧倒したというのか……相手がかなり格下だったのだろう。
客席に手を振っている如月選手と対照的に、ヴィタリー選手は肩を落として退場していった。
その様子を見て、俺は胸の鼓動が早くなり鳥肌が立つのを感じた。恐怖からではない、アラムと初めて剣を交えた時にも感じた高揚感だ。
ほんの数秒しか見ていないのに、こんなにも気持ちが高まるものなのか!
『続きまして第1ブロックの第2試合に移ります!
3年武術B組、
フィールドに入ってきた金選手の向かいのゲートから出てきたのは、初日のカードとしてはインパクトが強過ぎる人だった。
『3年武術A組、《
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