第9章 王都アルキニス ③

 宿から出発して数十分、遠くから見えていた王城に近付くにつれその大きさがだんだんハッキリと分かってきた。


「凄い……」


 窓から顔を出し上を見上げるがてっぺんが見えない。


「止まれ!」


 突然大声が聞こえ何事かと見るといつの間にか城門前にいたらしく、どうやら門の兵士に止められた様だ。屈強そうな兵士が一人近付いて身分の確認をしていた。


「お勤めご苦労さまです。」

「ノレイン様でしたか。呼び止めて申し訳ございません。」

「いいえ、ちゃんと仕事をしているのですから胸を張りなさい。それに、顔で判断して通していたら首を跳ねてました。」

「ヒッ!」


 あ、兵士の人が怯えて小さい声で悲鳴を……ご愁傷様です。

 しかし、ノレインの階級はこの人達より余程上なのかな?

 王城で働く人達の階級とか知らないけどそう簡単に首を跳ねたりは出来ないと思う。


「どうぞお入り下さい。城門を開門せよ!」


 兵士の一人がそう叫ぶと頑丈に作られた門が徐々に開いていく。

 完全に開いたのを確認してからノレインは竜車を進め門を通る。

 ある程度進んでから竜車は止まりノレインがドアを開けた。


「どうぞ足元にお気をつけください。」

「ありがとうございます。」


 竜車から降り再度城を見たがやはり大きい、もう全てが大きい。

 扉も窓も何から何まで大きく王城って凄いなと語彙力が低下する程だ。

 だって仕方ないじゃない?

 初めて生の王城を見たんだから。


「竜車をお願いします。」

「かしこまりました。」


 ノレインは待機していた兵士に竜車を預けて戻す様に指示していた。


「それではタクヤ様、ガーウィル様の所までご案内致します。」


 と言い歩き出すノレインに遅れないようについていき王城へと入った。




「広い……」


 中に入ったが、やっぱり語彙力が低下した様な感想しか出なかった。

 扉を入ってすぐがエントランスホールになっており、赤く染められた絨毯は毎日掃除されているのがわかるくらい綺麗で塵一つも落ちてないのではと思うほどで、壁には多分有名な人が描いたで有ろう絵が飾られてたり高そうな花瓶やらが装飾に使われている。

 両サイドは通路が伸びていてそれぞれ違う色の絨毯が引かれいる。この通路の先には別の棟へと繋がっているのかな?

 中央には二階に上がる階段がテレビでよく見る左右対称シンメトリーの曲線状に作ら、登った先には現国王と思われる人の人物画が大きく飾られていた。


「タクヤ様、こちらです。」


 ノレインは2階に上がらず右の通路へと歩みを進める。

 それに付いていくと窓から兵士達の練習場だろう場所が見え、模擬戦中の兵士の姿が見えた。

 更に進んでいると向かいから全身真っ白の服に身を包んだ数名の集団が歩いていきた。


「これはノレインさん。こんにちは。」

「カルスさん、こんにちは。」

「これからガーウィルさんの所ですか?」

「はい、こちらの御方をお連れに。」

「おや、こちらは?」


 ノレインは集団の先頭を歩いていた僕と歳が変わらないのではと思う人と軽く挨拶を交わしていたと思ったらこちらに話題を移してきた。

 白銀の肩まであるセミロングの髪、蒼い目は優しく安心を与える目をしていた。肌は白くちゃんと食べてる?と不安になる程だ。


「こちらの御方はユウキ タクヤ様です。」

「初めまして、結城卓也です。」

「こちらこそ初めまして、パクス騎士団団長のカルス・エルマールと申します。以後お見知りおきを。」


 これまた綺麗に真っ白な手を差し出し爽やかイケメンに許された優しい笑顔でカルスは握手を求めてきた。


「こちらこそよろしくお願いします。」


 ルックスは多分普通と思う自分にはその笑顔は眩しいよとそっと心の中でツッコミを入れながらも握手をする。


「!?」


 握手をした瞬間、一瞬カルスが驚いた様な顔をしたがすぐに笑顔に戻る。


「どうかしましたか?」

「いや、君の手が意外と暖かくて驚いただけでよ。気にしないでくれ。」


 笑顔を崩さず返答したカルスにダウトと言いたかったが握手をする手に若干力が加わっている事に気付いた。

 それは追求しないでくれと言いたそうな拒絶を感じるモノだった。


「それでは私達はガーウィル様の元に向かうので失礼致します。」

「あ、あぁ…申し訳ない。こちらもこれで失礼致します。」


 ノレインの一言に慌てて手を離しカルスは軽く頭を下げ歩き出した。

 そのすれ違いざま。


「君とはまた近いうちに会う気がするよ。」


 と、僕にしか聞こえない程の小声で呟いたのだった。

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