第8章 異変②
メリーネさんと取引をしてから2週間が経った。
あれからもう1回メリーネさんの店に行き新しいのを買取してもらった。
その時もルミーネが同行したが、やはり買取金額を見て拗ねていた。拗ねるなら付いてこなくても良いのにと言ったが本人曰く。
「タクヤ1人だとまだ不安だから保護者的な感じよ。」
だそうだ。
「よいしょ。これで全部かな?」
「そうね、アスタルテちゃん留守番お願いね。」
「任せるのじゃ。」
今日はルミーネの野菜を売りに行く日になっていた。
そのついでにメリーネさんに新しいのを売りに行こうとしていた。
いつもの様に村から森と抜け、途中で竜車に乗せてもらいエーネルまで向かった。
流石に3回目なので1人でメリーネさんの店に向かう事にルミーネも渋々承諾してくれた。
「いらっしゃーい。」
「お世話になってます。」
「あら、タクヤくん。ようこそ。」
「すみません、今日もこれお願いします。」
慣れた感じにカウンターに薬が入った瓶を並べる。
それを確認したメリーネさんは検査をせずに硬貨を渡してきた。
「あれ?検査は良いのですか?」
「平気よ。毎回品質の良いのを持ってきてくれてるからね。」
「それって。」
「そう、わたしは貴方を信頼をしている事になるわね。」
そう言いながらウィンクをしてきた。
商人同士の信頼は商売活動を始めたばかりの自分にはとても喜ばしい事だった。
「ありがとうございます!」
思わずお礼を言ってしまった。
「お礼される事では無いわ。これは貴方の人柄や性格を見て判断した事よ。自身を持って胸を張りなさい。」
「……ありがとうございます。」
その言葉に励まされる様な感覚になった。
だからこそもう一度お礼を言ってしまったのだろう。
「それはそうと、貴方宛に王都の方から手紙を預かっていたのだわ。」
メリーネさんは1通の真っ赤な封筒に入った手紙を渡してくれた。
「王都、からですか?」
「そうよ。昨日かしら、これを渡してくれと燕尾服を着た男性が訪れたのよ。お知り合い?」
「………」
王都になんて知り合いは居るはずが無い。
ましてや村からそんなに出る機会が無い自分には全くの無縁の地だ。
不思議に思いながらも封を切り中を確認した。
内容は至ってシンプルだった。
君と1度会って話をしたい。
この手紙を持って後日、君の都合の良い時に王都にお越し頂きたい。
エーネル管理人ガーウィルより
「ガーウィルってこの街を管理しているお方じゃない。」
横から覗いていたメリーネさんが驚いている。
「どうしてそんな凄い人から手紙をもらったのだろう?僕はその人と1回も会ったこと無いのに。」
不思議に思いながらもどうすることも出来ないと考え、ルミーネに相談する事に決めた。
「メリーネさん、この件は姉に相談して決めることにします。」
「そうね。わたしが関与しても意味の無い事ですものね。力になれなくてごめんなさい。」
「とんでもない!メリーネさんには毎回助けられてます。」
実際ルミーネの用事が終わるまでの間、メリーネさんにあれこれ聞いて教えてもらっている。
そのお陰で色々な知識が増え、この街にも馴染めた程だ。
「そう言って貰えると嬉しいわ。」
メリーネさんは少し恥ずかしそうにしながら微笑んだ。
……正直ドキッとしてしまった。
カランカラン
「タクヤ。用事が終わったから行きましょ。」
ちょうどその時ルミーネが店に入ってきた。
「あら、ルミーネさん。こんにちは。」
「メリーネさん、こんにちは。タクヤが迷惑かけませんでしたか?」
「いいえ、楽しくお話をしていましたのよ。」
お前は僕のオカンかってルミーネに言いそうになったのを堪えた。
てか、迷惑をかけてる前提で聞きに行ったよね今。
「すみませんメリーネさん、姉さんが来たのでもう行きます。」
「そうね、それではまた来るのを待っているわ。」
メリーネさんに軽く頭を下げ店を後にした。
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