第7章 旅商人の為の街エーネル⑤

 カランカラン


 ドアに付けられてたベルの音が店の中に鳴り響く。


「いらっしゃいませ~。」


 カウンターから大きな三角帽子を被った女性が反応した。

 全身黒い服で身を包み大きなマントを羽織っている。

 ……確かに見た目は魔女だな。


「すみません、こちらで商品の買取をお願いしたいのですが。」

「ちょっと待って下さい〜。」


 余程暇で寝てたのか寝起きの様な口調で対応を受けた。


「よいっしょっと……どれどれ、どんな商品を持って来たのかな?」

「あ、すみません。これになります。」


 バックから回復薬のは入った瓶を渡す。


回復薬ポーションね。許可証は持ってるかしら?」

「はい、これですよね。」


 先程発行したばかりのカードを見せる。


「ユウキ タクヤくんね。ちょっと待ってって、品質をチェックするから。」

「あのぉ、その品質チェックってどうやるか見せて貰っても良いですか?」

「ん?良いけど、君自分で品質チェックしてないの?」

「知り合いの薬師にお願いして確認しただけなのでやり方を知らないのです。」


 一瞬怪訝な顔をし考え出す店主。

 何かまずい事言ったか。

 そう思い焦りを覚えた。


「……分かったわ、教えてあげる。」

「良いのですか!?」

「商売上あまり教えたく無いのだけど知らないのも可哀想だからね。」

「有難うございます。えーと…」

「メリーネよ、ニア・メリーネ。」

「宜しくお願いします、メリーネさん。」

「それと、そちらの可愛い彼女さんは?」

「彼女じゃありません!!」

「ひゃぅ…」


 ルミーネが大きな声で否定したせいでメリーネさんビックリしてるじゃないか。

 それに、そんなに強く否定されると好きとか関係なく軽くショックだぞ……


「すみません、彼女は僕の姉です。」

「姉のルミーネ・アルベルトです。大声を出してすみません。」

「いえ、大丈夫です。よろしくね、ルミーネさん。」


 軽く自己紹介をし終え奥へと案内される。

 案内された先はやはりと言うべきか工房となっており色々な薬品や素材、機材が置いてあった。

 メリーネさんは回復薬が入った瓶を作業台に置き薬品棚から小さな瓶を取り出してきた。


「これが検査薬ね。これを1滴入れて混ぜると薬品が反応して毒が入ってると色が変わるの。」


 そう説明をしながら1滴回復薬に入れる。

 しばらく混ぜてみたが色の変化は無く安全と判断された。


「うん、大丈夫そうだね。後は効果だけど……これで良いかな。」


 そう言うと近くに有った小型ナイフを手に取り自分の手を切りつけた。


「何やってるんですか!?」


 驚きの余り止めに入ったが。


「効果を知るにはこの方法が一番早いのですもの。それにそんなに深く傷つけてはいないわ。」


 切った所からは血が滲み出ている。

 メリーネさんは僕が持ってきた回復薬を口に含み飲み込んだ。

 すると切った所は徐々に修復していき綺麗に傷がふさがった。


「驚いたわね。この薬普通のより効果が良いのね。これならうちの所に欲しいわ。」

「ありがとうございます。いくらで買取していただきますか?」

「そうね、1本をネール1枚とルーナ5枚でどうかしら?」


 クルスから回復薬の相場を聞いておいたが、一般的なのは2本で5~6ルーナだそうで、上等級になると1本4ネール程だそうだ。

 今回の買取額は1本で1ネールと5ルーナと安めの回復薬よりも高い。

 それだけ良い薬品と認めてくれたのだろう。


「その額でお願いします。」

「こちらこそ、良い商品を持ってきて下さってありがとうございますわ。」


 こうして初めての取引は無事に終えた。

 今回の儲けは持ってきた分すべて買取で7ネールと5ルーナとなった。


「ありがとうございます。」


 初めての取引で上々の成果を上げれて満足した。


「良いなー……」


 横で指を咥えてお金を見つめてるルミーネ、そんなに見てもあげません。


「今後もうちのお店を使って欲しいわね。」

「そうですね、月に2、3回は新しいのをお持ちしますか?」

「良いの!?」

「はい、取引してくれるお店はここしか今は知らないので良いですよ。」

「でしたら是非お願いしますわ。」


 メリーネさんは嬉しそうに目を輝かせて応じてくれた。

 これで固定の取引先も決まった事になる。


「それでは来週にまた来ますので。」

「分かったわ、お待ちしておりますわ。」


 軽く会釈をし僕達はメリーネさんの店を後にした。

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