第7章 旅商人の為の街エーネル②
「クルス君、お邪魔するよ。」
「タクヤさん、おはようございます。」
店に着きドアを開け中に入ると出掛ける準備が出来ているクルスが出迎えてくれた。
「おはよう、もう準備は出来ているんだ。」
「はい、いつでも出発できます。」
「少し待って、自分の道具持ってくるから。」
そう言って奥に向かう。
店の奥は作業場になっており、今では自分の道具を一式揃えてそこに置かせてもらってる。道具の量はクルス程多くない為小さめのリュックで充分だ。
それを背負い店に戻り準備が出来た事を伝え外に出る。
採取場所は大きく別けて四つ有り、最初に行った湿地帯、その近くに有る沼地、湿地帯の反対方向に有る池、最後に泉と沼地の真中に位置するであろう所に有る洞窟だ。
今日はその内の一つの池に向かう。
村から十数分程歩くと小さな川に出る。その川を上って行くと池に着く。
荷物を下ろし手分けして素材を回収していく。
事前にそれぞれが採取する素材を決めていたので行動は早かった。
似ている素材を回収しない様に気を付けながらお目当ての薬草や木の実を取っていく。
数十分もすれば必要な分は回収できるようになっていた。
「これぐらいで大丈夫ですね。」
「そうだね。あとは戻って調合するだけだね。」
「少し休憩してから戻りますか。」
「そうしますか。」
リュックから例のハーブ入の水が入った瓶を取り出す。
この水も作り方を教えて貰った為、自分で作る事が出来る様になった。
腰を下ろし渇いた喉に水を流し込み潤す。
一息ついて落ち着いた頃に少し前から考えていた事をクルスに伝えてみる事にした。
「クルス君、相談したい事が有るのだけど聞いてくれる?」
「どうしたんですか?」
「実は少し前から考えていたのだけど、自分の作った回復薬を売りに出してみようと思っているのだけどどうだろうか。」
「んー……」
それを聞いたクルスは目を瞑り考えだす。
少し経って口を開いた。
「正直賛成はしません。」
「理由を聞いても?」
「はい、普通に街などで出回っている回復薬程度の物なら賛成です。ただ、教えた回復薬はそれ以上の効果が発揮されます。問題は起きないとは思いますが、何も起きない根拠は無いのでぼくは反対です。」
「そっかー。」
「タクヤさんは何か考えがあって提案したのだと思いますが、すみません。」
「謝る必要は無いよ。少し思う所が有ったから聞いてみただけだし。」
反対されるのは予想出来ていた。
「ですが、品質をあえて下げれて売りに出すのは良いかと思います。使っている素材を変えるだけでも薬の品質は変わりますから。」
「素材の鮮度や乾燥状態で品質が変化するのは聞いたけど、素材その物でも変わるんだ。」
「ええ、似た効果の素材でも効力が違うのであれば作れます。」
簡単な話ゲームとかでポーションの素材が違うだけでハイポーションになったりする原理みたいなものだろう。
素材はどうやら店に有る様で戻ったら作らしてくれるとの事だ。
休憩も済んだので立ち上がり戻る事にした。
「出来た。」
店に戻り早速作ってみたがあっさりと出来た。
作り方は変わらなかったおかげで苦労はしなかった。
「大丈夫そうですね。」
出来た回復薬を見てクルスは満足そうに言った。
「これを数本瓶に入れ替えて作っておけば、街に売りに行けると。」
「そうですね。タクヤさん、お疲れ様です。」
小さい瓶に詰め替えると、薄い黄緑色した液体が光っているように見えて綺麗だった。
クルスにお礼を言い瓶を持って店を出る。
家に戻ったらルミーネに今度街に連れて行って貰えるように頼もう。
そう思うと楽しみで足取りが軽くなった様に感じながら帰宅したのだった。
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