第6章 薬師のクルス④

 日が変わり眩しい程の光に目を細めながら外に出る。

 朝早くにクルスの所に行き、お昼からは文字の勉強をする予定だ。ルミーネには悪いが黙って行かせてもらう事にした。

 店に着きドアを開けながら中に入る。


「ごめんください。クルス君居るかい?」

「はーい、今行きます。」


 奥から返事があった、彼はどうやら早起きの様だ。


「おはよ。朝早くからごめんね、平気かい?」

「あ、タクヤさん。おはようございます。大丈夫ですよ。」

「そっか、昨日の今日で悪いけど作り方教えて欲しいのだけど。」

「良いですよ。ただ、これから材料を取りに行くのでー……どうです、一緒に行きますか?」

「邪魔じゃなければ。」

「平気です、では一緒に行きましょう。ついでに薬草の種類も一緒教えますね。」

「よろしくお願いします先生。」


 冗談で先生と言ったら恥ずかしそうに尻尾を振ってる。


「す、少し待って下さい。道具を取って来ますから。」


 そう言い残し奥へパタパタと走って消えた。




 数分後、奥から自分より1回り大きいリュックを背負って出てきた。


「お待たせ致しました。」

「重そうだけど大丈夫?」

「毎日持ってますから平気です。さ、行きましょう。」


 軽い足取り外に出ていく。

 ……どこにそんな力が有るの?

 そんな事を思いながら後を追いかけるかたちで外に出る。




 しばらく森の中を歩き回ると開けた所に出た。


「一旦休憩しましょう。」

「そうしてもらえると助かるよ……」


 体力には一応自信はあったが歩き慣れてない森を進んだ為か疲れた。


「どうぞ。」


 渡されたコップの中には冷えた水が入っていて、それを一気に飲み干し喉を潤す。

 水を飲みきった時、ふと体が軽くなる感じがした。


「少し疲れが取れましたか?」

「うん。でもどうして?」

「この水には少し特殊な薬草が入っているので疲れが取れるのですよ。」

「へー。」


 多分ハーブの一種なのだろう。

 回復薬とは違い少量の回復だが疲れた体には丁度いい様だ。


「目的地まではもう少しです。」

「分かった、じゃあ行こうか。」

「もう平気なんですか?」

「さっき貰った水のおかげで平気だよ。」


 立ち上がりながら軽く体を動かす。

 うん、疲れはもう取れている。本当に凄いな。

 クルスも慌てて立ち上がりリュックを背負い直す。そんなクルスに行こうともう一度声をかけ歩き出した。




 着いた場所は朝だと言うのに薄暗くジメジメした湿地帯だった。

 泥濘ぬかるみに足を取られながらも先に進むとクルスが足を止めた 。


「着きました。」

「ここに材料が有るの?」


 辺りを見渡したが薬草らしい物が生えている様に見えない。それどころか毒々しいキノコが生えている。


「はい、ちょっと待ってください。」


 そう言うとリュックから梯子のような道具を取り出した。それを近くの木の根元に刺すとそれに乗り木を登り始めた。

 暫く待つと上からクルス降りてきた。

 手には湿地帯とは似合わに綺麗な木の実が握られていた。


「これが材料?」

「ええ、この森のこの場所にしかない木の実です。このまま食べても良いですが、これを干して乾燥させ、すり潰して他の材料と混ぜる事で回復薬の材料になります。」


 木の実を渡されながら説明を聞く。美味しそうに見えてきた。

 それからも薬草や材料になる木の実、毒が有るが他と混ぜると毒素が抜け薬草になる草などを教えて貰った。

 かなりの量を採取したところで村に戻る事にした。

 そこからは調合の仕方や素材の毒素の抜き方、似ている素材で危険な物とそうでない物の区別の付け方を教えてもらい気づけば太陽が沈み始めていた。

 流石に帰らないとルミーネが怪しむと思いクルスにお礼を言い店を出る事にした。

 家に戻るとルミーネが何処に行ってたと詰め寄ってきたが誤魔化して部屋に入り机に向い今日教えて貰った事をメモした。

 そのまま文字の勉強をする事にしひたすら書き写しの繰り返しをルミーネが晩御飯で呼ぶまで続けたのだった。

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