第6章 薬師のクルス③

「いつまで寝ているの、起きなさい!」


突然蹴られベットから床に落ちる、その際に頭を思いっきりぶつけた。


「痛ったーーー!!何する!」

「扉を叩いても返事が無いから開けてみたら寝てるから起こしてあげたのよ、感謝しなさい。」

「だからって蹴り起こすことはないだろ。」

「教えてもらうのに寝てるタクヤが悪い。」

「うっ……」


反論出来ない。それでも蹴る事は無いと思う、ここはもっと優しく起こすとかして欲しかった。


「まあいいわ、お昼ご飯にしましょ。食べ終わったら教えてあげるわ。」

「はーい。」


返事をしてルミーネに付いて行くとテーブルには既に料理が出来ており、アスタルテは椅子に座って足をばたつかせ待っていた。


「遅いのじゃ。」

「ごめんね、このバカが寝てたから遅れちゃった。」


すみませんアスタルテさん、料理を目の前にしてお預けさせてたのは謝ります、ですからそんなに睨まないで下さい。

などと心の中で謝りながらテーブルに目を向ける、朝と違い簡単なサラダとスープ、後はパンが置いてあった。


「腹減ったのじゃ、早う。」

「そうね、食べましょ。」


ルミーネよりアスタルテの方が食い意地はってるのではと思い始めた。




簡単な昼食を取った後はアスタルテは外に出て行った、ルミーネは筆記用具とA4くらいの大きさの紙を持って部屋にやってきた。


「それじゃ教えるけど、まさか文字も書けないとか無いよね?」

「そのまさかです。」

「本気で?」

「本気で。」


あー、ルミーネが頭を抱えて蹲っちゃった。


「なんとなく予想はしてたけどここまでとは……」


すっごいブツブツと何か言ってる…


「ええ、いいわよ。やってやりますわよ!きゃ!」

「アイタ!」


心配で覗き込んだ瞬間、頭を上げたルミーネと思いっきりぶつかった。そのまま2人で頭を抱えて蹲る。


「っ~~~……、痛ったいじゃない!」

「突然頭抱えて蹲ったから心配して覗いたらいきなり頭を上げるから。」

「なら一声かけてよ。」

「その前に頭を上げたじゃないか。」

「それじゃまるで私が悪いみたいじゃない!」

「そう言ってないでしょ!」

「なんですか?逆ギレですか!?」

「だったら何!」

「良い度胸じゃない、もう教えてあげない!」

「おう、好きにしな!」

「「ふん!」」


お互いそっぽを向いて顔を背ける。

せっかく心配したのにこの態度は無いと思う、確に声をかけなかったのはこっちが悪いけどさ。

……んー、流石に今回は声をかけなかった自分が悪いか、謝ろ。


「「あの。」」

「……」

「……」

「「そっちからどうぞ。」」

「……」

「……」


綺麗に被った。

顔を見合わせ目を点にする。


「…ぷっ、あはは。」

「はは、ははは。」


ルミーネが耐えきずに吹き出し笑い出す、それにつられて笑った。


「ごめんなさい、せっかく心配してくれたのに私ったら。」

「僕の方こそごめん。」

「初めて会った時もこんな感じで喧嘩したよね。」

「そうだね。」

「ふふ、さーて教えますよ。」

「お願いします、先生。」

「任せなさい。」


笑顔でそう言うと羽根ペンを持って紙に文字を書いていく。見た目は韓国の文字と似た感じだ。


「まずこれから覚えようか。」


一通り書き終わった様で羽根ペンを置き紙を渡してくる、文字数は多分ざっと数えて50だろうか。


「こっちが旧言語の文字ね、こっちから覚えた方が新しい文字を理解しやすいから。」

「そうなんだ。」

「似てるからね。それにこっちは覚えやすいし。」


確に見た感じローマ字に近いかもと思った。




ルミーネの説明は上手だった。

最初に文字を見た時にローマ字に似ていると感じた通り母音と子音が有り、書き方もローマ字そのものだった。最初に言語の統一をした人物が自分の分かりやすい様にしたのだろう。

しばらくは文字の模写で覚える事になるかなと思いながら違う紙に写していく。

どれぐらい経ったのだろうか気づけば日が暮れアスタルテが帰っていた。

一旦休憩を挟み1人で模写を再開した。




「ご飯出来たから食べよ。」


そう言いながらルミーネが扉をノックしながら入ってきた。


「分かった、今行く。」

「どう、順調?」

「理解はしてるけど覚えるにはもう少し時間がかかるかな。」

「そう、覚えたら教えて。」

「うん。」


作業を止め晩御飯は何かと楽しみにしながらルミーネに付いて行く事にした。

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