第6章 薬師のクルス②
「ただいま戻りました。」
「戻ったのじゃ。」
村長の家に戻り玄関を開け中に入った、奥まで行き座敷を覗くとルミーネが起きていた。
「ずるい、クルス君の所に行くなら起こしてよ。」
あー、こっちも拗ねてる……
「気持ちよさそうに寝ていたから起こすのも悪いかと思って。」
「だって暇だったんだもん。」
「起きてからずっとこの調子なんじゃ。」
村長が顔を出しため息をつく、村長も宥める事が出来なかったようだ。
「あ〜あ、クルス君をモフモフしたかったなー。」
……ん?ルミーネさん、今何て言いました?
「小さくて、毛がモフモフで、小動物みたいで可愛いクルス君をモフモフしてきたのでしょ!ずーるーいー。」
「違う違う、怪我を治すのに薬を貰ったからお礼を言いに行ってただけだって。」
確にモフモフしたくなる毛並だったけど……
「うーー、次行く時は教えてよね。絶対に行くから。」
「分かった、分かった。」
まだ文句有り気な顔でこっちを見てくる。
どうしよ、次行く時は回復薬の作り方を教えてもらうから黙っておきたいが、そうするとまた拗ねるだろうしー……
「そうだ、村長に新言語を教えて欲しいって言ってたって聞いたけど本当?」
「うん、覚えていた方が色々と便利だしね。」
「そっかー、良いよ。」
「ん?」
「だから教えても良いよって言ったの。」
「本当かい、ありがとう助かるよ。」
もう少し考えたりするかと思っていただけに、あっさり承諾して若干驚いた。
「そうと決まれば早速帰って教えますか。」
「……ちょっと待って、そんなに急がなくても。」
「何言ってるの、時間は有限なんだから早い方が良いでしょ。」
「僕の泊まる場所とか決まって無いでしょ。」
「それなら私の家で良いじゃない。」
この子は何を言い出してるですか?僕には理解出来ません。
「それはどうかと思うのじゃが……」
ほーら、アスタルテも引き攣った顔で言ってるじゃないか。
「何が問題なの?」
「ルミーネ、それ本気で言ってる?」
「?」
ダメだこの子、貞操観念とか年頃の男女がどうのこうのって言うのが無いのかな。
助けを求める様にアスタルテを見たが、諦めた顔で首を振ってらっしゃる。お願いこの子に色々と教えてあげて!
「ふむ、行く宛が無いじゃったらワシの家にでも泊まってなさいと言いたかったのじゃが心配無用じゃったようじゃの。」
「ちょっと待って下さい、流石に男女が同じ屋根の下でってのはまずいでしょ!」
「どうして?」
「ほら、色々と困るでしょ!お風呂とか、着替えとか。」
「あー、大丈夫。」
「なんで?」
「覗こうとしたら喉を食らうから。」
……笑顔でそう言ってきた。
「たっだいまー。」
「……お邪魔します。」
「邪魔するの。」
元気の良い声で自分の家に上がるルミーネを見ながら玄関を通る。
「もう、そんな他人行事みたいに入らなくて良いのに。」
「そう言ってもねぇ。」
「そうじゃの、一応礼儀と言うものじゃからの。」
「じゃあ次からはただいまにしてね。」
「分かったのじゃ。」
「分かったよ。」
これ以上変な事を言ってまた拗ねられてもめんど……困るからと思い頷く。アスタルテもどうやら同じ意見だった様で素直に同意していた。
「タクヤはこの部屋使ってね、アスタルテちゃんは私と同じ部屋ね。」
「アスタルテちゃんじゃと……」
おぉ、アスタルテが絶句してる。
「後で部屋に行くから。」
「う、うん分かった。」
「さ、アスタルテちゃんはこっちについてきてねー。」
「ちゃんじゃと……わらわをちゃん付けで呼んでるじゃと……」
きっとルミーネに悪気は無いはず、それを分かっているからアスタルテも怒れずにいるのだろう。凄い顔でこっちを見てるが取敢ず無視をした。
割り振られた部屋はベットと机と簡単な装飾が有るだけの内装だった、埃が一つも無いくらいに掃除がされている。倒れる様にベットにダイブをして横になると、日の光でポカポカしていて気持ちよかった。そして、色々と有って疲れていたのか僕はそのまま夢の中へと落ちていった。
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