第5章 アルーべ村⑥
「はー、食べた。」
作った朝食の殆どを1人で食べたルミーネは湯呑みに入ったお茶を飲んでゆっくりしている。
「で、これからどうするの?」
「んー、もう1回村長に会って話をしたいかな。まだ聞けて無い事があるし。」
「そう、なら私もついて行ってもいい?」
「構わないけど。どうして?」
アスタルテは多分聞かなくても付いて来ると思うが、ルミーネが付いて来る理由が分からない。
「面白そうだから!」
……だそうです。
少しルミーネの家でゆっくりした後村長の家に向かった。
「お邪魔します、村長います?」
「おぉ、お主らか。どうしたのじゃ?」
村長が奥から顔を覗かせる。
「昨日聞けなかった事を少し伺おうと思いまして。」
「そうか、上がりなさい。」
「お邪魔しまーす。」
「邪魔するの。」
中に入ると昨日案内された座敷へと向かった。
「それで、どんな要件なのじゃ。」
「はい。この村について気になったのですが、人間が居ないように見えましたが何か訳があるのでしょうか?」
「そうじゃの、昨日新しい言語が普及したと話したの。」
「はい。」
「その言語をいち早く取り入れたのは人間なんじゃ、他の種族も取り入れてはいたのじゃがなかなか慣れなかった。結果、こうして溢れた外れ者はひっそりと暮らす様になった。」
「でもそれでは人間も同じく外れ者出る筈です。」
「そうじゃの、本来は出ると思うのじゃ。じゃが人間の考える事は恐ろしい、我々他種が思いつかない条例を作り出したのじゃ。」
「それは?」
「旧言語使用禁止条例じゃ。内容は簡単なものじゃ、旧言語を使っている人間は排除すると言うのもじゃ。」
「………」
確かに内容は簡単だった、旧言語を廃止して新言語を普及するに当たって邪魔になる存在を消そうと考えた。新言語が普通に使われる様になると自然と旧言語は忘れられる、そうなった時旧言語を使って秘密裏に他種と内通して攻められては対処出来ないと感じたからこそ出た案なのだろう。
それでも分からい事が 。
「どうやって旧言語を話せるのかを見分けたのでしょうか?」
そんなにすぐには旧言語を忘れる事は出来ない、長い年月をかけて忘れるものだろう。
「簡単じゃ、見せしめに怪しいと思った者から殺していったのじゃ。」
「!?」
なんて事だ、この世界で元のいた世界の魔女狩りに似た事をしていたとは。
「今じゃ旧言語を話せるのはこの村に居る者か魔族、あとは王都の上の一部の者だけじゃろ。他の国はどうなっておるのかは分からんがの。」
「そうですか……」
「じゃからお主の存在は国から見れば条例違反者となるわけじゃな。」
「どうにかならないのでしょうか。」
「この村で過ごして居れば平気なのじゃがそうもいかんじゃろ。」
「そうですね、色々と知りたい事だらけなので。」
「じゃからの、教えれる者を付けるのはどうかの。」
「居るのですか!?」
「この村で唯一両方の言語が話せるのは者はおるの。」
「誰でしょうか?」
村長は目線を横にずらした、その目線を追いかけるように顔を向ける。
「まさか…… 」
「そのまさかじゃ。」
視線の先には気持ちよさそうに丸まって寝ているルミーネの姿があった。
自由だな、おい……
「ルミーネは頑張り屋での、独学で新言語を身につけたのじゃ。」
「ん〜……」
寝てるルミーネを我が子を見守る様な目で見つめる。
「悪くは無いと思うのじゃがどうかの?」
「僕としては教えて頂けるのなら構いませんが、ルミーネが何て言うか。」
「それなら心配無いじゃろ。」
「?」
「昨日からお主らを見ておったからの、分かるのじゃよ。」
長年の感ってやつなのか自信ある様な顔で言ってくる。
「まぁ、今は寝ているからの。起きたら聞いてみるかの。」
「そうですね。」
「他には聞きたい事は無いのかい?」
「今は大丈夫です。」
「そうかい、これからどうするのじゃ?」
「それなんですが、この村の薬師の場所を教えて頂けますか?」
「それなら広場に行けば直ぐに分かるのじゃ。」
「アスタルテ、分かるの?」
「場所を教えてもらったからの。」
「それなら案内は大丈夫じゃの、直ぐに帰ってくるのかい?」
「えぇ、お礼を言いたいと思いまして。」
「そうかい、ならルミーネは起こさなくても良いの。ここで暫く寝かせておくかの。」
「終わりましたら顔を出します。」
村長はそれを聞き頷くと奥へと消えた。
それを見送って立ち上がり、僕達は薬師の家に向かった。
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