第5章 アルーべ村④
「うぅ、頭が痛いのじゃ……」
「もう、飲めないよ…」
「……」
目を覚ますと見知らぬ天井を見ていた、隣を見ると2人がうなされながら寝ている。
「起きたかの。」
聞き覚えのある声が聞こえた、体を起こし声の方を見ると村長が立っていた。
「ここは?」
「ワシの家じゃよ。昨日はあんだけはしゃいだのじゃ、ゆっくり休んでなさい。」
「……すみません、お言葉に甘えさせていただきます。」
軽く会釈をしながらそう告げると村長は満足そうな顔をして部屋を出て行く、その姿が見えなくなってからもう一度寝る為に横になる。
「……眠れない。」
理由は簡単だった、僕を挟んで隣に女性が2人川の字で寝ている状況に遭遇した事がない為だ。そう女性が隣で寝ている状況にだ。
アスタルテの見た目は少女だから平気だ。いつの間にか着替えたらしく、今は可愛らしい服を着て寝ている。だが寝相のせいか服はだらしなく乱れ、おへそが見えていた。風邪引くぞ……。
問題はルミーネの方だ、何故か人の姿で寝ている。普段の姿で寝ていてくれれば特に気にはしなかったがこの姿は別だ、何がとは言わないが色々とまずい。若干服が乱れてるし、年頃の男には宜しくない姿で寝ている。
しかし何故この状態で寝ていたのか思い出せない、昨日はあの後、ルミーネにアスタルテが楽しそうに樽に入った酒を飲ませていた。そのついでみたいに僕にも飲ませてきた、そこまでは覚えている。が、その先を思い出そうにもぽっかり穴が空いたみたいに思い出せない。
……僕、ルミーネ達に何もしてないよね。
結局寝れる筈もなく、ルミーネとアスタルテに布団をかけ直し外に出る事にした。外に出ると日の光が目に沁みる、心地よい暖かさを感じながら村を歩く事にした。
昨日使った広場は綺麗に片付けられている、時間が分からないがそれでも朝早くに起きたと思ったが、それよりも前に起きて仕事していると思うと頭が上がらない。
「おう、昨日の坊主ではねーか。」
「あら、おはよう、朝早いのね。」
「おはようございます、目が覚めたので散歩と思いまして。」
「そうなの、気を付けてね。」
「はい。」
仲の良さそうな夫婦に挨拶し別れた後、探索を再開する事にした。
暫く歩いていたがルミーネからどう説明されたのか僕の存在は小さな勇者みたいに噂されていた、会う度に色々と物を貰い村長の家に着いた時には持てないくらいになっていた。
「戻りました。」
ドアを開け中に声をかけるが返事が無い、村長は出かけてるのかな?
貰った物を近くのテーブルに置き、そろそろ起こすべきかと思いルミーネ達が寝てるであろう部屋に戻る。
「ルミーネ、アスタルテ起きてる?」
そう言ってドアを開けた、返事を待たずにだ。
「へ?」
「え?」
部屋に入って目に映ったのは着替え途中のアスタルテとルミーネの姿、なんと健康そうな体をしてます事……
「~~~!!」
ルミーネの顔が赤く染まっていくのが分かる。
「ははは……、ごめんなさい!!」
勢いよくドアを閉める。何でルミーネは人間の姿のままで着替えていたとか色々な考えが頭の中をグルグル回っていたが。
「タ〜ク〜ヤ〜。」
「ひいっ!」
閉めたドアがゆっくりと開き、ルミーネが覗いていた。
「見たでしょ。」
「み、見てない!健康的な体をとか、可愛い下着着けてるとか思ってないから!」
「見たんじゃない!バカーーー!!」
思い切りひっぱたかれた……
「ほんっと最低。」
「……ごめんなさい。」
「かっかっかっ、ルミーネよそれぐらいで許してやったらどうじゃ、タクヤも悪気があった訳じゃないのだし。」
「そうだけど……」
あの後、ルミーネに二時くらい正座でお説教された、今は叩かれた頬の痛みと足が痺れて悶絶している。
「確かにタクヤの不注意じゃったが別に裸を見られた訳では無かろう。」
「それもそうだけど……」
不満そうに顔を膨らませるルミーネを
ルミーネはいつもの姿に戻っている。
「タクヤも気を付けるのじゃぞ。」
「はい……」
「うむ、さて腹が減ったのう。」
「それなら私の家でご飯食べる?今は村長もいないみたいだし。」
「そうするかの、タクヤもそれでええじゃろ?」
「僕は良いけど……」
チラッと横目でルミーネを見てみる。
「はー、良いわよ。もう怒って無いしタクヤもおいで。」
「良かったのうタクヤ。」
「う、うん。」
「ほら、行くよ。」
先に歩き出すルミーネに付いて行く。
……ルミーネは怒らせない様にしよう、正直怖かったと、そう胸に誓う事にしたのだった。
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