第2幕 自惚れと後悔

第5章 アルーべ村

「着いたーー!」


 森の中を歩いて数十分、ルミーネの鼻のおかげで村に着く。狼って鼻いいんだなー。


「皆ー、ただいまー!」

「ルミーネ!無事だったのか!」

「心配したんだから。良かったー、本当に……。」

「ルミーネちゃん、本当に良かった、良かった。」

「捜索隊を出す所だったんだ、無事で。」

「皆、心配かけてごめんね。」

「いいんじゃよ、ルミーネや。」

「あんた、血だらけじゃないの!怪我してるの?」

「平気、転んで擦りむいただけ。」


 小さな村だけあって、皆ルミーネの事を心配していたみたいだった。ルミーネに群がる村人を離れて見ていた僕達、それに1人が気づいた。


「あれ、あの人達は?……って、人間!」

「何!」

「取り囲め!」

「へ?へ!?」


 気づけば武装した村人に囲まれた。


「取り押さえろーー!」

「皆待って!その人達は……。」


 村人が一斉に押し寄せて来る。あまりの早さに、止めに入ろうとしたルミーネの声が聞こえる前に僕達は囚われた。


「何じゃお主ら!離すのじゃ!」

「ちょ、ちょっと待って下さい!僕達は……。」

「五月蝿い!人間め、村を奪いに来たのだな!」

「皆、待ってって言ってるでしょ!!」


 てんやわんやだった。暴れ出すアスタルテ、取り敢えず話を聞いて欲しいと訴える僕、暴れるアスタルテを縛り上げようとする村人達、それを止めようとするルミーネ。ぐちゃぐちゃの状態に目を回し始めた頃、村の奥から1人?の老人が歩み寄ってきた。


「何の騒ぎじゃ、静かにせんか。」


 その一声でシーンと静まりかえる。暫くして、1人の村人がその老人に向かって話し始める。


「村長。今、村に人間が攻めて来たので取り押さえている所です。」

「人間が攻めてきたと。」

「はい。」


 老人もとい、村長はこちらをじっと見つめため息をつく。


「離してやりなさい、彼らは客人のようじゃ。」

「しかし…。」

「アルテ。」

「……わかりました。」


 渋々と言った感じで拘束を解く。うわぁー、まだこっち睨んでるよ。


「それより、今はルミーネが帰って来たことを祝うべきでじゃ。」

「そうですね。ルミーネの無事を祝いましょ。」


 猫の姿をしたビーストが、村長の言葉に同意して手を叩くと、多分女性陣だろう村人が集まる。


「今日の夜は宴だよ、皆腕をふるって料理を作るよ。」

「「「「わかったわ!!」」」」


 その一言を最後にそれぞれの分担を決め別れる。小さな村だけあって、さっきの確保までのもそうだったが連携は流石だ。


「ルミーネよ。」

「はい、なんでしょう村長。」

「客人をワシの家まで案内しなさい。」

「わかりました、行くよタクヤ。」

「お、おう……。」

「わらわも行くぞ。」


 ルミーネに案内され村の奥までやってきた。そこには他の民家より大きな家があった。中に案内され家に入ると、RPGとかで良く見る感じの作りになっていた。


「ほれ、そこに座り。」


 促され僕達は座敷の床に座る。座布団が無いので少しお尻が痛い……。


「………。」

「………。」


 沈黙が続く。少し経って村長が口を開く。


「そこのお主、ワシに何か聞きたいようじゃな。」

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