第4章 皆で笑う為に③

 あやつと、初めて会ったのはもう何十年前じゃったか…。ここに来たのは、洞窟の調査の為のようじゃった。初めてわらわの姿を見て、腰を抜かしておった。


「ド、ドラゴン!」

「ふん、なんじゃ、おぬしは。」


 こやつの正体なんて正直どうでもよかった、ただの暇つぶし程度になればいいと思った。たまたま、寝床にしていた場所じゃったから、適当に追い返してまた寝ようとした。


「わ、私はこの洞窟を調査しに来ました、サエキ・タクミと言います。」

「で、調査とやらは終わったのかえ?」

「い、いえ。今、到着したばかりなの、でまだです。」

「それは残念じゃな、ここはたった今から、わらわの住処なのじゃからな。」

「え、それって……。」

「出ていくのじゃな。」

「それは困ります!!」

「何じゃ急に、大声を出すんじゃない。」

「ここの洞窟調査で、多くの人命が助けられるかも知れないのです。」

「わらわには関係ないのじゃ。」

「お願いです、調査させてください!」


 正直押し負けた、目を見れば本気なのが分かった。

 なんでも、ここの池はそこら辺の湧き水とは違うとの事じゃった。そのおかげで、ここに生える植物は他では手に入らない物が多いとの事じゃった。



 こやつが来て数週間経った。結果としては、まあまあだった。

 1度情報を持ち帰って、整理したいから暫く離れると言ってきおった。二度と帰って来るなと思い、尻尾で小突いってやったのは覚えている。

 しかし、奴は戻ってきおった。しかも、笑顔でただいまっと言ってく始末。こやつに自殺願望でも有るのかと疑ったぐらいじゃ。



「外で今、ドラゴンの存在で騒騒いでいるみたい。」


 いつもの様に、洞窟調査中いきなり話を振ってきた。


「いきなり何じゃ?」

「霧の竜が出たで騒いでいるんだって。被害も出ていて、ドラゴン全て危険だなんて言われてるって。」

「迷惑な奴も居ったもんじゃな。」

「でも、僕が思うにそのドラゴン、不自由だと思う。」

「ほぅ、何故じゃ。」

「だって、その霧一寸先も見えないらしいよ。その中で飛んでるドラゴンは霧の外を見た事有るのかな?」

「知らんのじゃ、わらわはそやつじゃないからのう。」

「だよね。でも、このまま騒がれ続けたら、この先ドラゴンは自由に飛べなくなると思う。」

「本当に迷惑じゃ。」


 人と言う存在自体が迷惑じゃと思った。結局は自分達の都合で他を支配しようとしている。


「私は寂しいと思うな。」

「?」

「ドラゴンって、自由空を飛んでる存在でしょ。不自由になって欲しくはないなぁ。」


 驚いた、こんな阿呆も居るのじゃなと。


「私の目標の一つに、ドラゴンの自由が有るんだ。この研究も上手く認められれば、私は上の階級に上がれる。そうなれば夢に1歩近づく。」

「……異端者と言わるとしてもかえ?」

「その覚悟は出来てるよ。君も、自由に飛べる様になるまで待ってね。」


 勝手に、わらわが不自由と言いたいかの様な発言に少しイラッとしたが、面白いとも思ってしまった。


「勝手にせい。」

「うん、勝手にする。」




 それから研究と探索は続いたが、次第に結果が出なくなってきた、行き詰まったのだ。成果の出ない事に、イライラしていたのが見て分かる程になっていた。


「くっそ!!何故、結果が出ない!」

「落ち着くのじゃ、失敗しても次は成功するかもしれんじゃろ。」

「そう言って、何回も、何回も失敗したじゃないか!!」


 近くに有った空の瓶を投げつけてきた。音を立てて割れ、散らばる。その光景を見てタクミはハッと我に返る。


「ご、ごめん、私が悪かった。そうだな、次に期待しよう。」

「気にするでない、お主の夢の為に頑張るのじゃ。」

「ありがとう……。」


 疲れと精神的疲労で参ってるのは、見ていて嘆かわしいかった。じゃが、自分で決めた道を諦めないで欲しいと、いつの間にか思う様になっておった。

 わらわも、少しながら手伝いをしていたのが馴れない作業にミスが続いた。それが彼の精神に更に負荷を掛けていたとは知らずに。



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