第4章 皆で笑う為に②
一通り思いを叫んでいた気がする。何を言っていたのか後半は覚えていない。
「はぁ…、はぁ…。」
「……。」
静まり返る。誰も声を発しようとしない。
「おぬしは……。」
「……。」
「おぬしは、それでも言うのじゃな。自分を信じろと。」
「……。」
先程まで、怒りが顕になり怒鳴っていた声とは違う感じの声が聞こえる。
「わらわは…、人間を信用出来ない。」
「だろね……。」
「だから、おぬしの事も信用出来ない。」
「僕も同じ立場ならそう答える。」
「じゃから……。」
「ただ…。」
僕は被せるように言葉を吐く。
「ただ、僕は君を解放する。」
「何故そうなるのじゃ?解放されたわらわが、おぬしを殺すかもしれんのじゃぞ。」
「だから、最初に言ったじゃないか。僕が間違っていたと。」
「……。」
「アスタルテ。君は、最初っから自由を求めていた。なのに、僕は目先の情報だけで判断してしまった。だから正直、君に何をされても文句は言えない。」
「なら。」
「それでも僕は、君を解放する。」
「何故そこまでこだわるのじゃ。今なら逃げれるとは考えないのじゃ。」
「いや、考えない。それじゃ、他の奴らと同じだ。僕は同じ事をしたくない。」
そうだ。アスタルテに言われて悔しかったから子供の様に叫んで、みっともなく駄々をこねる子供みたいに喚いたじゃないか。
「決めた。」
「……。」
「僕は、皆で笑えるようにこの世界を変える。」
「発想が子供じゃな。」
「君たち見たら子供でしょ。」
「そうじゃな。」
「だから、盛大に駄々をこねるてやる。この世界を僕は変えてみせる。その為のも、まずは。アスタルテ、君に決めて貰いたい。」
「何をじゃ。」
「僕は、今からその足枷を解除する。それで君は自由だ。それで、だ。この先、僕の夢の為に手を貸してくれるかい?」
「なっ!ふざけておるのか!」
「大真面目だよ。もし無理なら……。僕を殺しても構わない。ただ、あの娘だけは見逃してあげて。巻き込まれただけだから。」
「……それでおぬしはいいのかえ?」
「僕は言ったよ?皆で笑えるようにしたいって。そこに、君が入っていないと意味がないじゃない?」
僕は盛大に我儘だ。子供だ。大人のフリをしたガキだ。なら、最後までそれを貫き通せばいいじゃないか。その最初の1歩で躓いていたら、この先なんてとてもじゃないが無理だ。
「タクヤ何を言ってるの!」
ルミーネから悲痛の叫びが聞こえる。
「死んだら、私は許さないわよ!なんの為に私達は頑張ってきたのよ!」
「ルミーネ。」
静かに首を振る。大丈夫、心配しないでと意味を込めて。
「タクヤ……。」
何かを諦めたかのように、ルミーネは黙る。
正直、不安しかない。
アスタルテが気に入らなくて、本当に僕を殺すかもしれない。本当は、殺す事を楽しんでいるだけの存在なのでは。
ゆっくりと歩み寄る。身体に相当のダメージを受けている為かまともに歩けない。こんな状態でもう1度攻撃を受けたら、次は本当に死ぬかもしれない。
ふらつきながらもやっと足枷の前まで辿り着いた。
深く深呼吸をする。
足枷に触れ目を閉じる。そして、唱える。
「我、汝の解放を望む……。」
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