第2章 新しい出会い④

バン!!


 ドアを勢いよく開け部屋から飛び出す。


「何アレ、何アレ、何アレ!!!」

「僕が知るわけ無いだろ!君こそアレが何なのか知らないの!!」

「村の掟で夜は危険だから出るなって言われてたから私も知らないわよ!!」


 とっさにランプと油を持って来たがどうしろって言うんだ。


「外に出れれば村まで逃げれるわ!」


 そう言うと彼女は階段を降りて玄関へ向かう、その後を追う形で付いて行くが。


「まじかよ……。」


 入口にも先程のモンスターがうじゃうじゃいた。


「ちっ!こっち!!」

「あっ……。」


 彼女の手を引き別の逃走用の道を探す、後ろから小さく声があがった気がしたが今はそれどころではない。ランプの明かりを頼りに遺跡内を逃げる、しかし。


(しまった!行き止まり!)


 2階が崩れて道が塞がれている場所に来てしまった、上の方に行けそうだが2人で一緒に登る時間は無さそうだ。


「君から先に登ってくれ!」

「手を握られた…。手を握られた…。手を…。」

「聞いてる!」

「は、はひ!?ななな、何かな??」

「僕が時間を稼ぐから君は先にこの瓦礫を登って上に行ってって言ったの。早く!!」

「で、でもそれじゃあなたは…。」

「時間が無い!今はそれが最善と判断したからそうするだけだ、だから早く!!」

「わ、分かったわ。」


 こうしている間にも奴らが迫ってきている。

 数メートル先に油が入った瓶を投げた、瓶は盛大に音をたて中身をぶちまける。

 近くに落ちていた角材を持ち襲撃に備える。


カサ……

カサカサ…

カサカサカサカサ

カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ


 目の前には無数の蜘蛛型モンスターが迫ってきた。

 まだ、まだだ、もう少し。

 ……今!

 モンスターがぶちまけた油の前に来た瞬間持っていたランプを投げる、ランプの火が油に引火し盛大に炎を巻き上げる。


きぃー、きぃー


 炎に焼かれたモンスターの鳴き声が聞こえる。


(やった、成功した。)


 通路を塞ぐ様に燃え広がる炎にモンスターは立ち往生しているようだ。


「登った?」

「も…う…少しで…。って、きゃぁーー!」

「どうしたの!?」


 後ろから彼女の悲鳴が聞こえた、振り返るとバランスを崩し落ちてくる姿が見えた。


「危ない!!」


 とっさに角材を投げ捨て彼女を抱き受け止める、その瞬間脆くなっていたのと先程の衝撃で足元の床が大きく抜け落ちた。


「え…。」

「嘘でしょ!」


 そのまま瓦礫と共に下に落ちた。

 空中で彼女の頭を抱き抱え自分が下になる。


(せめて彼女だけでも無事で居れば……。)


 名前も聞いていないのにここまで何故出来るのかは自分でも不思議に思ったがそれでも体が動いた。







 暫く落ちたと思う、未だに地面にご対面していない。


(かなり深いな。)


 そう思っていた時。


バシャーン


 盛大に水しぶきを上げ着水をした。


(息が…。)


 落下の衝撃で息が漏れ苦しい、彼女を抱えたまま必死に海面を目指す。

 一緒に落ちてきた瓦礫のぶつからないように気をつけながらも片手で這い上がる。


「………ぷはぁ!死ぬかと思った!」


 正直死んだと思った。

 水面に落ちた時、ほぼ背中から落ちた。ある程度の高さから水面に落ちると車に跳ねられる並の衝撃が襲うと聞いていた。それなのに生きている事は奇跡と思う。


「彼女は!」


 抱えていた彼女を見ると意識を失っていた。


(まずい、肺に水が入ったか?どこかぶつけたか?)


 急いで岸を目指す。

岸に彼女を引っ張り上げ無事を確認する、どこかぶつけた様子は無かったが息をする音が聞こえない。水を飲み込んでいる可能性がある。


(くそ、間に合ってくれ。)


 車の免許をとる時に講習を受けた心臓マッサージと人工呼吸をビーストに効くのか分からないが必死に行う。


「……ごぼっ!がはっ、ゲホゲホ。……すぅ、すぅ。」

「……良かったー。」


 暫く心臓マッサージを繰り返してたら息を吹き返した。

 そしてそのまま寝てしまった。


(ここは。)


 見たところかなり大きな洞窟みたいだった、落ちてきたところは見えない。

 どこから入ってきているのか月明かりが洞窟のなかを幻想的に照らしていた。

 彼女を寝かし辺りを探索しようとした。


ジャラジャラ


 動こうとしていた体を止め息を殺す。


(鎖の音?)


 嫌な予感がし警戒する。


ジャラジャラ

ジャラジャラ


 鎖の音が近ずいて来る。

 それと同時に地響きが聞こえる。

 まさか。

 まさかまさか。

 外れてくれと思いながらも音がする方に視線を向ける。

 そして、暗闇から音の正体が月の光に照らされあらわになる。

 ソレは最近見た存在と同じだった。


「……ドラゴン。」


 月明かりに映されたのは深紅に染まるドラゴンだった。

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