第2章 新しい出会い③
「はぐ、むぐ。はぐはぐ。」
「………。」
一週間分と思い調達した食料が彼女の胃袋に消えていく。
ただそれを唖然としながら見るしか出来ない。
「はぐはぐ。がぶ、はぐ。んぐ!?ゲホゲホ」
「落ち着いて食べなよ。取らないから。」
近くに流れていた川から廃墟で拾った空き瓶に汲んできた水を彼女に渡しながら苦笑いし言う。
勿論、空き瓶は綺麗にすすいだ。
「んぐっ、んぐっ、んぐっ……。はふぅー。いやー、食べたー。」
「いや、本当によく食べたよ……。」
まさか調達した分全部食べるとは思っていなかった。
残ったのは、今自分が食べている物だけだ。
「ほら育ち盛りは良く食べ、良く寝るって言うでしょ?」
「うん、限度がある。」
「ちまちま五月蝿いわね。良いじゃない、また探せばいいのだから。」
ははは、こやつめ。
人の食料を平らげておきながらいい度胸しているな。
「で。」
「ん?」
人が今後について考えていると彼女の方から質問が飛んできた。
「はぁ。ん?じゃないわよ。あなたが何か聞きたいみたいな顔しているから食べ物のお礼も兼ねて質問待ちしているのだけど?」
「へ?あぁ、ごめんね。色々と聞きたいが……。まずは僕の言葉が分かるんだよね?」
「それについては私も不思議だわ。どうして人間のあなたが旧言語を話せるのか。」
「旧言語?」
「なに?知らないで使ってるの。」
「知らないも何も、僕は昔からこの言葉を使って生活してきたのだからね。」
「……。」
それを聞いてい彼女は何かを考える様子で暫く黙った。
「他には?」
「あとは、英語を少しなら。」
「エイゴ?なにそれ。」
「やっぱり知らないよね。」
日本語を理解出来ても英語は理解出来ないと。
となると、旧言語は日本語だけなのか。
他の言語も入っているとめんどいと思っていたがそれはそれで嬉しい。
「なんでもない。気にしないで。」
「ふーん……。ねえ、そのエイゴってのを喋ってみてよ。もしかしたら聞いた事があるかもしれないし。」
「えぇ!?どうしても?」
「どうしても。」
「………。」
(まいったなぁ。喋ってみてって言われてもどうしよっかな。)
考えていると、昔大好きな人が言っていた1文が浮かぶ。
「So many men, so many minds」
「え?」
「So many men, so many minds.意味は人の数だけ心は違うであってたはず。どう、聞いた事のありそうな感じ?」
「んー、魔術詠唱時に唱えるのと似ている気はするけど、魔術を使える奴なんて魔族だけだし。」
この世界には魔術の概念が有るのか。
しかし、使えるのは魔族だけってのは夢が無い。
「詳しく知っているのは長老だし、私は聞いただけの知識しかないわよ。」
「ありがとう、それだけでも分かった事は多いから助かったよ。」
「え、あ。う、うん。」
あれ?
なんか反応が。
「照れてる?」
「っつ!!うっさい、初めてだったんだよ人間に褒められるのは。」
多分人なら顔を真っ赤にしているのが分かるのだろうけど、残念ながら彼女はビースト。
毛で覆われていて分からない。
ただ尋常じゃない程毛は逆立ってた。
「何見てんだよ。食うぞ。」
「人の事を穢れて言ってた奴が何を言ってるんだが。」
「察しろよ!!」
……やばい。
何がやばいってからかうのが面白すぎてやばい。
少し警戒し、観察しながら話していたが彼女はイヌ科のビーストなのだろう。
犬特有の感情表現が尻尾に出て見ていて飽きない。
だから、もう少しからかって遊ぼうと思っていた時。
カサカサ
ん?何かが動いたような音が……。
カサカサ
カサカサカサカサ
「な、なぁ。」
「な、何かしら。」
「僕の気のせいなら良いのだけど何か動いた音した?」
「あら
カサカサカサカサカサカサ
「「…………。」」
2人で青ざめた顔をし、ゆっくりと音のした方へ顔を向ける。
カサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサカサ
そこには無数の蜘蛛のような生き物が窓の外で
大きさはパッと見でも40~50cmは有る程だ。
「「………。」」
もう1度顔を見合わせる。
多分お互いに最高の笑顔で固まってると思う。
そして……。
「「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁ」」
2人一緒のタイミングで悲鳴をあげた。
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