第一幕 僕と少女と竜

第2章 新しい出会い

 異世界2日目の早朝から起きて行動を開始した。

 まずはこの街についてしっておきたい。

 今後拠点となる街がどの位の広さがあるのか、何がメインで取引が行われているのかを知っていて損は無い。

 寝具に使った布を腰に巻ける様にたたみ巻く。

 油の入った瓶は紐が付いていたのでベルトに固定。

 はたから見たら変質者一歩手前だが気にしない。

 街の入口に向かい、そこからぐるっと時計回りに街の側面に沿って歩く。


(んー、体感的には1周で約4時間くらいかな。意外と大きいな。)


 思っていたよりも大きくて困惑をしたが、出店が準備を終えたあたりで丁度良かったと思った。

 街からは活気溢れる声が聞こえ始めた。


(何を言っているのか解らないが活気のある声を聞くと元気が出るな。)


 市場から元気を貰いながら声のする方へ向かう。


「☆♯ฅΣ;:☆★¥:/」

「ΣКП★☆★¥/;」

「★ロ∞ÜỏωエA∀▽♭、∞ПЖМКН」


 うん、やっぱり解らない。

 市場に着いて聞こえた言葉に耳をいちよう向けてみたが理解出来ない。


(よーし、見て回るか。)


 そう心の中で呟いて市場の中に向かった。






(これぐらいかな。)


 途中で落ちていた紙と鉛筆に似た道具でめぼしい果物や穀物とそれに書かれていた文字を写した。

 趣味で絵を描いていたのがこんな形で生きるとは思わなかった。


(これを元に森で探すか。)


 日は既に真上に登っていた。

 ここから森までは2時間はかかると思うし、何より目的の物が見つかるか解らない。

 あまり時間を掛けるのも得策ではない。


(早いとこ森へ向かうか)


 そう思いその場を後にした。






 街から出て森に向かう途中、書いたメモを見ながら思った。


(これってリンゴやミカンに似ているな。穀物も多分米に近い物だと思う。)


 形状や色が違うが知っている果物や穀物に近い感じがした。

 匂いも果物はほぼ同じって言っていいくらいに近かった。


(これなら森で探すのに苦労はしなさそうだな。ただ……。)


 どうやって実っているのか知らない為、何処を探すかで時間がかかると考えれる。

 まぁ、どうせ行き当たりばったりだからやってみない事には分からない。

 その後もあれやこれを考えながら歩き続け、気が付いた時には森の前まで来ていた。






 森に入ってだいぶ時間が過ぎた。

 収穫は上々だ。

 数種類の果物を布に包み背負って森の中を歩く。

 そのうちの一つのリンゴに似た物をそのままでがじりながら探索をする。

 今晩の寝床確保の為だ。

 日が沈み始めた為、急いで目的を変更し大木の幹や洞窟を見て回った。

 しかし何処も彼処も寝るには狭過ぎた。


(参ったなぁ。灯が欲しいけど火種が無いから松明すら作れない。)


 森が真っ暗になる前に寝床だけは確保はしたい。

 そう思って歩いていると。


(ん?あれは。)


 人影に見えなくもないが毛深い。

 ふさふさしていてさわり心地は絶対いいと思う程の毛並み。

 ビースト。

 人に動物の耳や尻尾が生えているだけのとは違いほぼ動物に近い。

 動物と違うのは服を着ている事だが。


(行き倒れか?)


 先程から見事にうつ伏せで大の字に倒れているソレはピクリとも動かない。

 生きているのか怪しいくらいだ。


(………。)


 正直行き倒れなら助けたいが言葉が通じるか分からない。

 それどころか罠の可能性もある。

 試しに近くに転がってた石をぶつけないように傍に投げてみた


 コツン

 ……

 …………

 ……………


 反応が無い。

 耳すらピクリとも動かない。


(んー、どうするか。)


 考えて居る時間も勿体無い。

 悪いと思いながらも取った木の実を数個近くに置いてその場をゆっくり離れる。

 足音をたてないよう気をつけながらもその場を後にする。





 数分後


「遺跡?」


 何かの廃墟なのだろうか、大きな遺跡のような建物を見つけた。


(もう今夜はここで寝よう。歩き疲れたし良いよね。)


 そう思い中に入る。

 中は洋風のお洒落な建造物に似た作りになっていた。

 玄関ホールには大きな階段があり2階に上れた。

 手近なドアを開け中に入る。

 ふと違和感を覚える。

 何かヘンだ、何処もおかしくないはずなのにおかしい。

 疲れのせいかもしれない。

 荷物を下ろし壊れかけのベットに腰を下ろす。

 探索中に見つけたランプに油を入れ、置いてあった火付け石を使い記憶を頼りに火をつける。

 暖かい温もりと、ほっとする安心感がその空間に生まれた。


(…………。)


 先程放置してきたあのビーストが気になる。

 気になってしょうがない。


「はー。」


 仕方ないと思い、荷物を置いてランプを持ち来た道を引き返す。


「居た。」


 未だに綺麗に行き倒れている。

 罠の可能性を警戒しながら近づく、そして。


 すぅ、すぅ


 気持ち良さそうな寝息が聞これた。

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