残念僕の映画感想。

勤曜日

「知らねぇよ、想像力を使え!」

『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』


 恋愛映画は好きじゃない。だって登場人物を見ると胃がムカムカするから。画面に映し出される、顔のお綺麗な男女二人の感情の揺れ、意味ありげに交わる視線、ロマンティックな背景とそして音楽。少し想像しただけでも反吐が出そうになる。

 その点この映画は非常に良い。出て来る奴等は全員クズかその上を行くクソで、おおよそ全ての人間が己の私利私欲のために行動する。おかげで僕らは理想と現実のギャップに苦悩することなく映画を楽しむことが出来る。クズがクズに殺されて、またそのクズが他のクズに殺されて。負の連鎖、あるいはドミノ倒しと表現するべき展開なんだけど、これが最高に爽快で、脳味噌が良い感じにシェイクされる。まさに目で愉しむジャンク・フード。

 監督はガイ・リッチー。『映画版シャーロック・ホームズ』『コードネーム U.N.C.L.E.』とか、映画通じゃなくてもタイトルぐらいは聞いたことあるんじゃないだろうか。偏見かもしれないけど、女性受けが良さそうな映画を撮る人な気がする。それも一部の。多くは語らないけど、ね。

 さて、簡単にストーリーを紹介しよう。

 ロンドンの下町に住むチンピラのエディ(ニック・モーラン)は、幼馴染のベーコン(ジェイソン・ステイサム)、ソープ(デクスター・フレッチャー)、トム(ジェイソン・フレミング)に出資してもらい賭けカードゲームに挑む。多額の出資金を集めたエディだったが、勿論勝算はあった。彼は天性の勘を持つ男であり、他人のどんな些細な表情も捉えて相手の考えを読むことが出来る。つまり、賭け事に関しては抜群の才能を持っていたわけだ。

 けれども挑んだ相手が悪かった。ギャングの顔役であるハリーにまんまとイカサマに嵌められ、逆に大借金を背負わされてしまう。さらに借金を返せなければ、エディの父親が経営するバーを取り上げられてしまう、とも。

 追い込まれたチンピラ4人組だったが、幸運にも上流階級のお坊ちゃん達が営むマリファナ・ファームを襲撃する計画を耳にする。それに乗っかれば、大金も大麻も手にすることが出来る。形勢逆転の予感。さて、どうなる?

 本作の面白さは、主人公たちと無関係に進行していた出来事たちが、徐々に上手く絡み合っていき、一つの騒動になってゆく展開にあると思う。勘違い、間の悪さが重なって、終着点に雪崩れ込む。でも大騒ぎしたくせに終わりは穏やかで、清々しさすら感じる。先にジャンク・フードと表現したけど、カロリーが高いくせにしつこくはないのだ。途中の猥雑なシーンすらお洒落に見える。雑多なくせにスタイリッシュというか。抑えられた色彩がそういった感想を抱かせるのかもしれない。

 とにかく見てて楽しいし、全て見終わった後にもう一度見たくなる。酒瓶片手にヘラヘラ笑いながら観て、どうぞ。

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