第5話 晴天の霹靂

 雨です。


 バケツをひっくり返したような、なんて表現がこのくらいのものかは分からないけれど、雨の降る音が家の中でさえもうるさいなぁと思えるくらいには、強い雨でした。通学路が徒歩の時間がとても長いので、普段よりも少し早めに、家を出ました。



 ※※※※※※※※※※



 雨が更に強さを増す頃には、私は既に校舎に入っていました。

 靴を脱いで下駄箱の中にある上履きと交換し、階段を一つだけ登ります。

 教室に入り、扉をしめ、電気を点け、席に着きます。ほとんど、毎日の繰り返す行動です。

 ほとんど、というのも、今日の朝は天海凪咲が私より先に、学校に居なかった事です、


 あの子は毎日、私よりも早くに学校で待ち伏せをしてきます。

 昨日の対応を謝ろうとしていた私は小さくため息を吐いて、本を読みながらあの子が此処に現れるのを待ちました。


 ...。


 ...。



 五分経ったけど、あの子は一向に現れません。今日は休みなのかな、なんて想像していたとき、教室の扉が勢いよく開きました。一人しかいない教室内に扉の衝突音が響き、続いて一人の少女が現れました。


「失礼しますっ!!」


 教室の前で深く深呼吸をして、少女は言葉を続けました。


「階段で人が倒れてるんです!手を貸して貰えませんか!!」


 教室には私しかいなかったので仕方なく、その子に付いて行きました。


 教室を出て階段に向かう途中、視線の先に人の後頭部が見えました。

 小走りで近付き、私は、自分の目を疑いました。


「嘘......」


 真っ直ぐ伸ばした茶色い髪。

 強く握れば壊れてしまいそうなほど細い、小柄な体躯。

 その手元には一枚の、押花のされた栞。





 ―――私の嫌いな人が、頭から血を流して倒れていました。

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