第3話 揺れ動く
「ねえ
「...。」
「ちょっと月乃さん、何?そんなに私たちと話したくないの?」
「ねえ、人が話してる時くらい本置きなさいよ!」
「...。」
今日は朝から、なんだか騒がしいです。私の前に、名前も知らない女生徒が三人立っています。
名前?さあ、話したことも無いので覚えていません。ただ分かることがあるとすれば、この三人は確か、別のクラスの人だったと思います。
「ねえ、あんたまじ感じ悪いね。」
「クラスでも浮いてるって気付いてないの?」
「ちょっと顔整ってるからって調子乗らないでよ!」
いじめは被害者が無反応だと、どんどん悪化して行くと聞いた事があります。
でも、こんな低レベルの罵倒しか出来ない人のいじめなんて、反論したり、謝罪をするのも面倒くさいです。正直鬱陶しいです。読書が進みません。
「っ...!」
三人の真ん中にいた女性がしびれを切らしたようで、私から本を取り上げました。これで話を聞くとでも思ったのでしょうね。
相当苛立っていたのか、取り上げた本を、私の目の前でびりびりに破いてしまいました。
「ほらよ、おい、これで話聞けるわよね。」
「...。」
中学校で散々いじめられてきた私は、いじめに対する対処は完璧です。
鞄の中を漁り、先ほど破かれたのと全く同じ本を取り出して、続きを読み始めます。
しかし彼女は、それすらも取り上げ、破きました。
小さくため息を吐き、彼女の顔を見ます。眉間にシワを寄せていて、相当怒っているのがよく分かりました。
「あんたさ、本気で調子乗んなよ?あ?」
「ふあぁぁ...眠...。」
「っ...!てめっ...!」
はい、今のはやっちゃったなと思いました。でも弁明させてください。昨日は少し徹夜して、眠かったんです。
まあそれを知らない彼女の表情は、正しく『怒髪天を衝く』でした。
私は彼女に、襟を捕まれ無理矢理引き上げられました。正直、服が伸びるのでやめて欲しいです。言ったところで怒りを助長させてしまうので言いませんが。
怒りでわなわな震えている彼女は、今にも暴力を振るいそうでした。横にいた二人も、怖い顔して私を睨んでいます。そして私は、何も言わずにそれを見ていました。
「やっほ~、奏ちゃ~......奏ちゃんっ!?」
ちょうどその時、私の嫌いな人が教室に入ってきました。すると襟を掴んでいた女性は雑にその手を離し、舌打ちを残すと左右の二人を連れて教室から去っていきました。
「奏ちゃん...大丈夫?どこか痛くない?」
不安そうな表情をしながら駆け足で寄ってきた茶色い髪の女の子。彼女の顔を見ると、やっぱりもやもやした感覚が拭えず、彼女を視線の外にはずしました。
でも、今のもやもやは、別のものに理由がありました。
何故なら、今彼女の顔を見た時、心の中で少しだけ、安心した私がいたからです。
ため息をひとつこぼして、机に掛けてある鞄を
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