第2話 過去に重ねる今

 別に、あの子に何かされた訳では無いんです。しつこく絡んでくる、という意味だと何かされていますが。



 ※※※※※※※※※※



「あんたとはもう友だちじゃない。絶交してやる!」

「二度と私に関わらないでよね。顔も見たくないわ。」

「あんたの事、嫌いだから。」


 かつて、私にそう言ってきた人たちがいました。ただ言われるならまだ良かったのだけれど、私がこの言葉を忘れないのは、それを言った人たちはその少し前、私の事をと言った人だったからです。



「私達、ずっと友だちだよねっ」



 が、一瞬で、に変わるのが嫌で―――



「私奏ちゃんの事大好きっ。ずっと友達でいようねっ。」



 だと思ってた人が、一言でに変わるのが嫌で―――



「私も私もっ。奏のことずっと大好きっ」



 昨日までだった人に冷めた目で見られるのが嫌で―――



 私はその時、になりました。


 人の好意には徹底的に防戦し、言葉の一つも交わさない。挨拶も、感謝の言葉も言わない。徹底的に、人に嫌われに行く。それも、最初から嫌われていると分かっていれば、という言葉の重みが軽くなるからです。

 そんな事をしている内に、私の周りには、誰もいなくなりました。


 これでいい。これで傷付かずに生きられる。誰も私に話しかけてこない、遊びに誘わない。


 あぁ、心が軽い。

 あとは卒業まで、一人で静かに過ごす......


 そのはずだったのに。



 ※※※※※※※※※※


「奏ちゃんっ!」


「奏ちゃんおはよ~っ」


「奏ちゃん大好きっ」



 彼女を見ていると、昔仲良くしていた友人の事を思い出して、凄くもやもやした気分になります。私が彼女を嫌いな理由は、多分それが原因です。


 早くホームルーム開始のチャイムが鳴ってほしい。今はただ、そう願うばかりでした。

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