ペチュニアの栞

あるみな

第1話 交差する二人

 お昼になりました。

 午前の授業が終わると、あの子がやってきます。


「奏ちゃ~んっ、一緒にご飯食べ......あぁっ!先に食べちゃってる!!」


 元気の良い声とともに、一人の女生徒が教室に入ってきました。

 私の隣の席に座り、鞄から出した弁当を広げています。


「いただきま~すっ」


 私は彼女が、

 隣で美味しそうに弁当を食べている彼女の事が、嫌いです。



 ※※※※※※※※※※



 天海あまみ 凪咲なぎさ

 あの子が私につきまとうようになったのは、随分と前からの話です。


 お昼ご飯を食べる時、帰るとき、あの子は必ず付きまとってきます。


「奏ちゃ~んっ、かーえろっ」


 ほら来ました。彼女の事が苦手な私は、声をかけられても返した事はありません。でもあの子は、毎日毎日、懲りることなく声をかけに来ます。そしてそれが、私をいらいらさせる原因となりました。


「...。」

「あっ、置いてかないでよ~っ」


 彼女の顔を一瞥して踵を返し歩き出すと、彼女は茶色い髪を上下に揺らしながら付いてきました。



 校門を出た時点で別れるのに、なんでなんだろう。

 あぁ、いつになったらこの子は私を、嫌ってくれるのかな。



 笑いながら私に言葉を紡ぐ彼女の横で、そんな事を考えていた放課後でした。

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