第3話 テラスにて

「あー疲れた。やっぱ、外の空気は良いな。それよりも大丈夫か?」

 光君はテラスにもたれて、僕を見る。

「うん。嘘だから。全然大丈夫」

 僕は笑って、光君にこたえる。

 そう半分は嘘。半分は本当なんだけど……。

「嘘?」

 怪訝そうに聞かれて、

「だって、光君表面上は嫌そうな顔一つしないでいたけど、疲れてるっぽかったから……」

 僕は素直に言ってみた。

「お前、良い奴だな。俺が嫌がってるのわかったんだ。すげーな」

 驚きを隠せずに光君は極上の笑みで僕を褒めてくれた。

「だって、あれが僕だったら耐えられないもの」

 そう、そのくらい大変そうだったから。

 人と話すのが苦手な僕には、絶対に耐えられない確証がある。

「そういや、お前家に連絡入れてないけど、大丈夫なのか?」

「あ、すっかり忘れてた!」

 僕は慌てて携帯を出すと、家へと連絡した。

「友達の誕生日会に出席してて、遅くなるから。うん。うん。ご飯はいらないから」

 僕がそう話していると、突然光君が僕のスマホを奪った。

「こんばんは。藤堂光と申します。今日は突然誘ってしまって申し訳ありませんでした。帰りが遅くなると思いますので、今日は僕のうちに泊めてもよろしいでしょうか? はい。いいえご心配には及びません。大丈夫です。はい。本人に代わりますね」

「耳元でキャーキャー言わないでくれる? 分かったから。ちゃんとするよ。大丈夫だから。うん。うん。分かったから。じゃあ、切るよ」

 はしゃぐ母親の言葉を遮る様に僕は携帯を切った。

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