第17話「ジッパー」

 その男は探検家だった。


 ある時、男は秘境と呼ばれる場所へ旅に出かけた。何かの財宝が眠っているかもしれないという夢を抱き、步を進めていた。


 やっと秘境である森へたどり着き、男は砂の地面に腰を下ろした。

 一息ついて再び立ち上がろうとして地面を先の方まで見ると、地面はある場所を境に芝生が茂っていることに気がついた。

 男は不思議に思い、その芝生へと近づいてみた。男は芝生をまじまじと見てみた。


 すると男はあることに気がついた。芝生が始まっている境に、何かの金具がひっついている。ジッパーだ。金具のジッパーが地面にくっついている。男はその境目を追っていった。


 境目の最初に行くと、ジッパーを開ける取っ手がついていた。男は興味を惹かれ、そのジッパーを開けてみた。

 中には雪が覆いかぶさっている芝生の地面があった。リバーシブルのように、芝生の真裏にくっついている。どんなに揺すっても、雪が落ちることはなかった。重力が逆転しているかのように、ただ雪は左右に転がるだけだった。


 男はその地面を撮影し、故郷の国に帰り、テレビ局にその映像を持ち込んだ。

 男はたちまち有名人になり、写真や動画の使用料がテレビ局から転がり込んできた。男は大金持ちになり、清々しい気分になった。

 やがて男は旅に出ることがなくなった。一生遊んでもなくならないほどの金で好きに遊んで生きていたからだ。


 男はある日、風呂に入っていた。

 ボディブラシで背中を洗っているとき、何かがブラシに引っかかった。

 何に引っかかったのか不思議に思い、男は浴場にある全身鏡で何とか自分の背中を見た。




 男の背中には、ジッパーが引っついていた。

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